マンボウ研究者、山へ行く。奈良県の紅葉の名所・吉野山を探索してみた

2023.11.07

 奈良県の吉野山は桜の名所であるが、同時に紅葉の名所でもある。桜が秋に紅葉したものはサクラモミジと呼ばれる。吉野山では例年、10月中旬から桜の紅葉が、11月上旬からはカエデ属の樹木の紅葉が見頃を迎える。

 私はこの春には桜を、夏には奇祭「蛙飛び行事」を見に吉野山に足を運んできたので、秋の様子も見てみたいと思い、2023年11月2日に吉野山に向かった。

最初に断っておくと、今回の記事にマンボウは一切出てこない。ミミズは出てくる。

 

 

秋の吉野山駅

2023年11月初旬。異常気象とも言うべき季節逆戻りで、記録的な暑さが予想されていた。冷え性の私にとってはありがたい話だが、自然に生きる生物達には何らかの異常をもたらしていそうだ。

 

9時半頃、電車で吉野駅に到着。以前書いた春と夏の記事で大体同じアングルの吉野駅前の写真を載せているので見比べて欲しい。見比べてみると、駅を出てすぐの所にある桜が紅葉しているのが分かる。

 

 今回はマイクロバスに乗って奥千本おくせんぼんへと行こうと考え、ロープウェイに乗ってケーブル吉野山駅に移動した後、マイクロバスに乗り換えた。マイクロバスは急な山道を上がっていくが、朝なので観光客もほとんど歩いておらず、スムーズに最終到着地点である『奥千本口』に着いた。春には3時間ほど歩いて上った道のりが、マイクロバスだと22分だった。道中、吉野山の観光地を見ていたのだが、桜の時期とは異なり、屋台や出店は出ていなかった。吉野山は桜の季節が一番人で賑わうようだ。

 

 

熊に警戒しながら奥地へ進む

 今回は金峯神社きんぷじんじゃより奥地へと進もうと思い、修行門を上った。修行門はかなり傾斜がきついので、ここを上るだけで足が痛くなる。

 

 修行門を上って金峯神社に到着すると、右側にさらに奥地へと進める道がある。ここから先は舗装されていない山道で、木々が生い茂って薄暗い。いつどんな生物が出てきてもおかしくはない。

 

 最近は、野生の熊に襲われる事件が頻繁にニュースになっている。事前にネット検索した範囲では、吉野山で熊に襲われた事件は見付からなかったが、近隣の山にはいるようだ。もしかしたら、この山でも熊と遭遇する可能性はあるかもしれない……そう考えた私は一応、熊除け対策として、振って鈴を鳴らすものを持ってきていた。この鈴は東京オリンピックの聖火ランナーを応援するグッズとして配られていたものだが、今回ようやく活躍することになった。

 

 この鈴を鳴らせるもの(グッズの名前が分からない)をリュックに装着し、鈴を鳴らしながら山道を行く。金峯神社より先には西行庵さいぎょうあんという観光スポットがあり、看板によると、片道徒歩約20分で着けるようだ。西行庵は隠れ紅葉スポットとして人気があるらしい。20分だったら熊に襲われる可能性も低いだろうと考え、やや速足で東回りに道を行く。

 

 山は熊も危険だが、ダニやヤマビルといった小さな吸血生物にも気を付けたい。長ズボンで下半身を覆うのは必須だ。また、割と頻繁に蜂が飛んでいるのも見た。周囲を警戒しつつ、薄暗い山道を進む。道幅が狭く、崖になっているところでは、手すりが付いていた。

 

 

穴場スポット、西行庵に到着

 目的地の西行庵に無事到着。時間帯によるのか、西行庵はうっすらと暗いところにひっそりと佇んでいた。

 

 穴場というだけあって、周囲の紅葉は綺麗だった。開けたエリアもあり、遠くの山々も一望できる。ちゃんと来た記念に写真を撮る。青い空、黄・赤・緑の葉とカラフルな光景が目を楽しませてくれた。

 

 西行庵周辺に生えている紅葉している木の葉に注目してみる。素人の分類で明確な自信はないが、こちらこちらの紅葉した葉に詳しいサイトを参照すると、おそらくカエデ属のオオモミジではないかと推測された。

 

 今度は西回りに西行庵から金峯神社に戻ることにした。こちらの道は崖沿いが結構多く、景色の見晴らしは良いのだが、足を踏み外すとかなり危険だ。さすがにこんなところには熊も出ないと思われるが、慎重に歩いて行った。すると、奥千本苔清水という看板が立っているところに出た。ちょろちょろと水が流れ落ちており、苔がたくさん生えている。蜂が水を飲んでいた。これがやがて大きな川になっていくのだろう。生の水は危険なので飲まなかった。

 

 

巨大ミミズと遭遇!

 いくつか観光ポイントを巡り、金峯神社に到着する直前の山の中で、大きなミミズと遭遇した。私の靴(おそよ25 cm)よりやや長い!! 『青色の光沢がある巨大なミミズ』と言えば、シーボルトミミズしか思い浮かばない。実際に大型ミミズ類をネットで調べてみても、これはシーボルトミミズ以外に当てはまらなかった。

 

 南谷ら(2009)、南谷ら(2010)による記録を見ると、吉野山ではまだシーボルトミミズは確認されていないようなので、本記事が初記録の可能性がある。シーボルトミミズは奈良県に広く分布しているようなので、金峯神社近辺で見つかったとしてもおかしくはない。

 

 普段は見ない大型ミミズと遭遇することもでき、無事金峯神社に戻って来た。ここから下山する過程では人も時々通るので、熊と遭遇する可能性も低いだろう。奥千本から下っていくと、たくさんスギの木を見るのだが、面白いことに気が付いた。春の記事と見比べて欲しいのだが、11月のスギの葉には茶色い楕円形の花粉袋が見られなかった。この時期にはまだ花粉袋は形成されていないのだ! 

 

 周囲の景色を見ながらさらに下っていくと、観光名所である花矢倉展望台に着いた。こちらも春の記事と見比べて欲しいのだが、春の記事で桜が咲いていたところが、見事なまでに落葉して茶色く見える。以下の写真ではちょうど手前に落ちてきた落ち葉も映っていた。

 

 桜の紅葉は10月中旬が見頃のようなので、一足遅く、既に枯れ落ちてしまっていたようだ。実際、ヤマザクラがたくさん植えられているところを通ると、ほぼ葉は残っていなかった。カエデ類の紅葉の見頃はこれからだが、今年は気温が高いので(この日の現地最高気温は24℃だった)、木々にどのような影響を与えているかわからない。観光に行く前に、インターネットで情報を確認した方が良さそうだ。

 

天然鹿ロースカツと大和牛コロッケ

 ちなみに今回の昼食は、地物が食べられる「枳殻屋(きこくや)」で、大和牛の手作りコロッケ、吉野産天然鹿ロースカツを食べた。どちらも200~300円なので、お手頃価格で食べ歩きができる。注文してから揚げてくれ、店内で食べることもできるので、私は店の中で食べることにした。

 

 鹿は串カツ状になっており、食べると結構肉が柔らかく美味であった。また、コロッケは結構重く、サクサクの衣と、ペッパーの効いた中身で、こちらも美味。どちらも下味が付けられているので、ソース不要で食べられた。

 

冬の吉野山は?

 春、夏、今回の秋と吉野山を探索してきたら……四季を通じて冬も足を運ばなければならないような気がしてくる。しかし、冬は寒いので、多分行かないような気がする。ちなみに今回熊を警戒していたのだが、お土産屋さんで聞こえてきた地元民の話によると、熊は出ないが、鹿、猪、猿が出る時があるとのことだった。観光地にせよ、用心にこしたことはないだろう。

 

 

今日の一首

秋吉野
 先に桜が
  紅葉し
   続いてカエデが
    紅葉し散る

 

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【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

このライターの記事一覧

参考文献

南谷幸雄・田村芙美子・丸山健一郎・吉田宏・鳥居春己・前田喜四雄.2009.奈良教育大学構内及び付属施設の大型陸生ミミズ相.奈良教育大学附属自然環境教育センター紀要,9: 1-4.

南谷幸雄・田村芙美子・山中康彰・市川彩代子・花木佳代子・丸山健一郎・吉田宏・鳥居春己・前田喜四雄.2010. 奈良県における大型陸生ミミズ相. 奈良教育大学附属自然環境教育センター紀要,11: 1-7.