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はじめに
初めまして。新入社員のだいふくです。
現在、研修中で、Lab BRAINSの記事を書かせていただくことになりました。私は大学で心理学を勉強して、錯覚に多く触れてきたので、今回はその一部をご紹介したいと思います。
早速ですが、そもそも錯覚は、どうして起こるのでしょうか?
理由としては、目や耳などの感覚器官から入った情報を脳が処理した結果だと言われています。例を挙げると、遠くにいる人や建物は小さく見えますが、私たちはそれを小人やミニチュアだとは認識しません。これは、目から入れた情報を脳が処理して、周囲の視覚情報から、遠い場所だから小さく見えると認識するからなのです。この脳のはたらきによって、実際の情報とは異なる世界を認識することとなり、錯覚が起こるというわけです。
では、実際に錯覚を見ていきましょう。今回は、画面上で体験できるものをご用意しましたので、ぜひ騙されてみてください!
CONTENTS
最初は、有名なミュラーリヤー錯視からご紹介します。
二つの図形の横線は同じ長さですが、上の方が長く見えるというものです。なぜこんな風に見えるのかという理由は、はっきりとは分かっていないようですが、有力とされる理論では、「奥行き感」が関係していると考えられています。
下図は、先ほどの図を90度回転させたものです。左の図形が奥に引っ込んでいる壁のコーナー、右の図形が手前に出っ張っている壁のコーナーにも見えます。つまり、左側の図形の方が奥にあるのにも関わらず、双方の縦線が同じ長さに見えているということは、実際の縦線は左側の図形の方が長いはずだと認識することで、このような錯覚が起こっているということです。
こちらは、チェッカー・シャドー錯視と呼ばれており、マサチューセッツ工科大学のEdward H. Adelsonが1995年に発表したものです。
画像のAとBを比べると、Bのほうが明るい色に見えますが、実際は同じ色です。動画で分かりやすい解説がされているので、信じられない!という方は、ぜひ確認してみてください。
この錯視が生じる理由の一つとしては、影がポイントとなります。Aは明るい場所にある一方で、Bは円柱の影となっている場所にあります。これにより、Bは影となる場所にあるから暗く見えているだけで、実際はもっと明るいはずだと認識することで、Bの色を脳が補正し、明るく見えていると考えられています。そのおかげで、私たちは影があったとしても、これがチェック柄であると、正しく認識できているのです。
続いてはムンカー錯視です。
上段4つの四角に、中段は青のストライプ、下段は黄色のストライプがかけられており、それぞれ、青みがかった色、黄みがかった色に見えています。これは、色の同化によるもので、周辺の色と混じりあって見えた結果このような錯覚が起こっています。
チェッカー・シャドー錯視と同様に、色自体は変わっていなくても、周りの色次第で、かなり違って見えるのですね。
次は、シルエット錯視です。
見たことがある方も多いのではないかと思いますが、見るタイミングや人によって、右回りに見えたり、左回りに見えたりするものです。みなさんはどのように見えますか?
そして、今回なんと、こちらの作品の制作者である茅原 伸幸さんに、制作のきっかけについて伺うことができました!茅原さんは、Wikipediaでも製作者として紹介されています!
当時Flashデザイナーだった茅原さん。3Dを使ったFlash作品を作ろうと、3Dモデルの回転画像をカラーでレンダリングしたところ、あまりに容量が大きな作品になってしまいました。当時のネット回線では表示することが困難なものになってしまったため、仕方なく黒一色に塗りつぶすことになり、今のシルエットの形になったのだそうです。
ただし、この時点ではまだ錯視と思っておらず、できあがった作品を奥さまと見たときに、
「右足をあげている? 左手をあげている? そもそもどっちに回っている?」
と話が噛み合わず、そこではじめて見方やタイミングによって見え方が異なっていることに気が付いたということでした。
こんなにも有名な錯視作品が、偶然生み出されたなんてすごいですね…!!
皆さんもぜひ、周りの方と見え方の違いを確かめてみてください。
続いての動画では立体錯視が紹介されています。
錯視の中でも、三次元の物体を利用するものが立体錯視と呼ばれています。この立体錯視は杉原厚吉教授によって作られたもので、2016年の第12回ベスト錯覚コンテストで2位に輝いた作品です。
作者:杉原 厚吉 教授 明治大学 研究・知財戦略機構 先端数理科学インスティテュート 研究特別教授、工学博士
四角いはずの立体が、鏡に映すと丸い…!?回転させると今度は逆に…!?とても不思議ですね…。
さらに、こちらもありがたいことに、制作者である杉原教授に、直接お話を伺う機会がありました!
この立体の断面は一見すると水平ですが、実際は凹凸があります。しかし、人間の脳は直角や平滑を好む傾向があり、断面を平らであると錯覚するため、きれいな四角や円に見えているということです。
だまし絵の中でも、不可能図形と呼ばれるものは、立体では作れないと言われてきました。しかし、平面に見えるところを曲面にするという方法で、作ることのできるものがあるということが分かってきました。杉原教授は、なぜ作れないと感じてしまうのか? という疑問を持ち、研究をされてきたそうです。そして、直角に見えるところに直角以外を使って立体を作ることで錯視効果を持たせることができると発見し、他にもたくさん立体錯視を作られています。さらに不思議を体験したい方は、ぜひこちらもご覧ください!
この動画では、白い服を着ている人々と、黒い服を着ている人々がバスケットボールでパスをしています。
動画の中で、白い服を着ている人々がパスをした回数を数えてください。
みなさんは、正確に数えられるでしょうか!?
ここから先はネタバレになってしまうので、動画を見てからスクロールしてくださいね!
…さて、結果はいかがだったでしょうか?
ちなみに、私が初見の時は、合ってた!と喜んだのもつかの間、しっかりゴリラを見落としていました。
この動画は、ハーバード大学で行われた実験になります。白い服を着た人たちのパスに集中していたことで、黒いゴリラを見落としてしまったということなのです。見落としの理由は、選択的注意と呼ばれる機能によるものです。人間は、多様な情報がある環境下で、自分に必要な情報を選択しようとします。そのため、白い服の人たちのパス回数という情報以外を排除した結果、堂々と登場した黒いゴリラに気が付くことができなかったということでした。
いくつか錯覚を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
知らない錯視図形や錯覚動画はありましたか?楽しんでいただけたら幸いです。
私たちの脳は、想像以上に、情報を様々な形に処理してくれているのですね。
今回は、錯覚の中でも錯視に関するものを紹介させていただきましたが、錯聴など、他の五感に関するものもたくさんあります。気になった方は、ぜひ調べてみてください!
『ゼロからわかる心理学錯覚の心理編』木村直之
『認知バイアス事典』情報文化研究所