"ChatGPT”はバイオミメティクスのツールになりえるか?!

2023.05.17

巷で話題の人工知能チャットボットである”ChatGPT”。

使用方法について注意すべき点はあるにしても、適切に使えば便利なツールではあるだろう。今回はバイオミメティクスのユーザーにとって、ChatGPTがバイオミメティクスのツールとして役立つかどうかを考えてみた。

Chat GPTにバイオミメティクスツールとしての可能性を聞いてみた

バイオミメティクスのプロセスにおいてChatGPTが使えそうなのは、聞くまでもなくアイデア提案だろう。
生物から活用する製品を探すアプローチでも、技術課題を解決する生物を探すアプローチでも使用できそうである。

調べる対象を短時間で探す作業には限界があるので、すぐにいくつか提案してくれるのは役に立ちそうだ。新しい視点かどうかはさておき、自分が考えてなかった生物や考えに気づける、という効果は間違いなくある。

 

Chat GPTにバイオミメティクスネタについて聞いてみた

技術課題「空気抵抗」をいれて提案させてみたところ、いくつか提案してくれた。

ものすごく大きな視点では間違ってないように思えるが、「鳥」や「魚」など生物の分類については曖昧な返答が多い印象であり、具体的な生物名はでてこなかった。

 

次は、種名をいれてみた。

多くは出ないだろうと思いきや、提案してきた。殻や棘の柔軟性はないような気がするが、「頑丈で軽量」が正しいなら確かに1.2は間違っていない提案である。

気になったので「摩擦を減らす効果もある」について調べてみたが真偽不明であった。「棘なら摩擦軽減だろう」と解釈しているようにも感じる。私がそのような研究を見つけられなかっただけかもしれないが、やはり誤回答の可能性も大いにあるので、情報を信じすぎないことが大切だ。

 

次に、種名ではなく、もう少し広い生物名「ウニ」で質問してみた。

先ほどの「イバラモエビ」より情報量が多いからか、より具体的な提案になったように感じる。3の建築については以下のような建築への応用が参考にされているのだろうか。

リンク:シュトゥットガルト大学『BUGAウッドパビリオン』

ちなみに、同じ質問でも、質問するたびに回答が変わる場合があった。

上図では提案の前後は全く同じだが、間の3つの提案は異なっている。

ChatGPTは情報から確率的にありえそうなものを断片的に選択してつなげて回答する仕組みとされているので、その仕組みであれば提案ごとの確率の差が小さいことが回答が変わることに影響していそうだ。多くの提案を列挙してほしいなら何度か質問するのもよさそうである。


さいごに

今回ChatGPTを初めて触った感想として、とてもきれいな文章構成で返答されることに驚いた。最初にイントロ、箇条書きで提案、最後に締め、という返答が多く、楽に読める文章であった。

しかし、返答内容については、抽象化された曖昧な説明が多いのと、分野の偏りが見られた。特に、バイオミメティクスの質問に関しては医療にからめた回答が多い印象であった。

また、日本語で使用する際に、細かいニュアンスの違いまでは区別できていないように感じる。例えば、「~への応用が期待できます」と「~へ応用されています」の違いなど。

返答内容の信憑性だけでなく、そのあたりも注意して使用することが必要そうである。

バイオミメティクス開発での使用については、エビデンスの確認を自分で行うことができれば、ChatGPTは役立つツールであると感じた。少なくとも、企業の忙しい開発現場においてアイデア調査などでは有用である。アイデアそのものではなく、アイデアになりそうな候補をあげてもらっている感覚であった。

質問の仕方にも良し悪しがあるようなので、使用者のスキルが向上し、ソフト本体については情報の出展などを細かく確認することができるようになれば、ツールとしてより便利になるだろう。

最後に、こんなことも質問をしてみた。

ごもっともだが、なんとも当たり障りのない回答であった。

 

【著者紹介】橘 悟(たちばな さとる)

京都大学大学院 地球環境学堂 研究員
バイオミメティクスワーククリエイト 代表   

X(Twitter)では記事公開や研究成果の報告などバイオミメティクス関連情報を呟きます。
パナソニック株式会社にて社会人経験を積んだのち、バイオミメティクスの研究を行うために退社し再びアカデミアの道に進む。企業への技術指導など、バイオミメティクスのアウトリーチ活動も積極的に実施。
※参考「学びコーディネーターによる出前授業」
研究知のシェアリングサービスA-Co-Laboにてパートナー研究者としても活動中。バイオミメティクスの紹介や生物提案など相談可能。

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