使い過ぎ大丈夫ですか? スマホの仕組みを大公開!

2023.05.09

 暇な時、ついつい触ってしまいがちなものといえばなんだろう? そう、スマートフォンだ。総務省のまとめによると、2016年現在のスマホの平均使用時間は82.1分/日だったらしい。今ならもっと長くなっている気がする。うぅむ、耳の痛い話だ。

 日々のやり取りはもちろん、調べ物、ゲーム、さらには日常生活を助けるお役立ちアプリから、コミュニケーションを彩る面白アプリまで、あらゆる場面で活用されているスマホ。しかしながら一歩引いて考えてみると、そもそもスマホのそのものの仕組みをよく知らないことに気がつく。

 そこで今回は、スマホの仕組みを、バッテリー・通話・タッチパネルの3つの観点で解説していく。

 それではまず、バッテリーの仕組みについてだ。

 

バッテリーの仕組み 〜発電と充電〜

 早速だが皆さん、現在使用しているスマホ端末に使われているバッテリー、すなわち電池の種類をご存知だろうか?

 電池の種類と言われてもピンと来ない方もいるかもしれない。最近はユーザーの手で蓋を外せない[注1]端末が主流だし、そうでなくともこれまで気にも止めていなかったというのが普通だろう。

 もちろん、使用されている電池は単三電池や単四電池ではない。

 今日、スマホに使用されている電池で最も主流なのが、リチウムイオン電池という種類の電池である。小型なのに高電圧、さらに充電することで繰り返し使用可能という、良いこと尽くめの電池だ。

 ところで、そもそも電池はどのように発電と充電を行っているのだろうか。

 電池は正極と負極、そして電解液から構成されている[注2]。正極と負極を導線で結び、両方を電解液に浸けると、電子を放出しながら電解液中に負極が溶け出す。電子は導線を通って、スマホ本体を動かし、正極へと移動する。正極では、電子と電解液中の成分が結合し化合物を作る。

 これが発電の原理だ。

 

 では、充電する際には何が起きているのだろう。

 発電の際は負極から正極に電子が流れたが、今度は反対に外部電源[注3][注4]を用いて負極に電子を送る。すると、発電時に正極で発生した化合物が電解液に溶け出し、電子を放出する。同時に、負極では電解液中に溶け出した負極の成分が、電子と結合し負極を元の形に復元する。

 正極と負極、そして電解質のいずれも、発電前の状況に戻るため、導線を繋げば再度利用可能、というわけだ。

 以上が、スマホで利用されている電池の仕組みだ。

 つづいて通話の仕組みについて見てみよう。


通話の仕組み 〜マイクとスピーカー〜

 通話に欠かせないのがマイクとスピーカーだ。マイクは音声を電気信号に変換し、スピーカーは電気信号を音声に変換する。

 とても複雑そうな機構が入っているに違いない、と思わず身構えてしまいそうな代物だが、解き明かすと意外にも簡単な仕組みで動いていることがわかる。

 導線を巻いたもの(コイル)の中に磁石を入れたり出したりすると、電圧が生じる。電磁誘導という現象だ。素早く出し入れするほど大きな電圧が生じるのだが、実はマイクやスピーカーを解説する上での肝となるのが電磁誘導だ。

 ご存知の通り、音とは振動だ。激しく鳴り響く太鼓の面を手で押さえて、実感したことがある人もいるのではないだろうか。

 ではこの振動を利用して、コイルに磁石を出し入れしたらどうだろう?

 音の振動は、高音の際には細かく、低音の際にはゆっくりとした間隔で震える。すなわち、音の高低と発生する電圧の強弱が連動するのだ。これがマイクが音を電気信号に変換する仕組みだ[注5]

 ではスピーカーはどうだろう?

 実は電圧が生じると磁石になることが知られている。したがって送られてきた電気信号は、磁石を揺らすことが可能になるのだ。

 磁石を揺らすことができれば音に変えられる。これがスピーカーだ。

 

 以上が通話に必須なマイクとスピーカーの原理だ。

 引き続き、タッチパネルの仕組みを見てみる。

 

タッチパネルの仕組み 〜タッチ位置の認識〜

 スマホを象徴するものといえば、何と言ってもタッチパネル操作だろう[注6]

 しかしながら、ただスクリーンに触れるだけであらゆる操作ができるのは、とても不思議に感じる。タッチパネルはどのようにタッチされたかどうかと、その位置を把握しているのだろう?

 スマホで使用されるタッチパネルは、ガラス表面上に、導電膜と呼ばれる膜をコーティングして作られる[注7]。これに電気を流す電極と、電圧の変化を感じ取る電極を繋げれば完成だ。もの凄く複雑なものだと思ったら、案外単純。

 これだけでどうしてタッチの有無と位置がわかるのだろう? 単純化のために直線で考えてみよう。

 直線を引き、適当な点に触れてみる。どこを選んでも、両端からの距離が決める点は一つに決まる[注8]

 線上に微弱な電気を流し、触れた時の両端の電圧の変化を計れば、電気的な方法でも検出可能だ。

 パネルにするには、この方法を直線から面に展開すれば良い。

 

 これまでスマホを構成するバッテリー、通話、タッチパネルの仕組みについて解説してきたが、いかがだっただろうか? 最先端機器であるスマホでも、仕組みを分解して考えてみると、なんとか理解できそうな気がしてくるのではないだろうか?

 最後に記事の趣旨からは外れるが、電気のちょっと不思議な性質について紹介して、今回の記事を締めさせていただく。

 

ちょっとはみ出し 〜電気の不思議な性質〜

 電気の通しやすさは、素材となる物質により異なる。金属は通しやすいし、プラスチックは通しにくい[注9]。だが実は、同じ素材でも電気の通し方は常に一定ではない。通し方を変える原因の一つが温度の変化だ。

 金属は常温でも電気をよく通すが、これを液体窒素などで冷却するとさらに通すようになる。逆に炎などで熱してやると電気は通しにくくなる。スマホやパソコンが熱くなると、動作がカクツク理由だ。

 一方、全く逆の性質を持つ素材もある。スマホやパソコンの肝となる部分に使用されている、半導体と呼ばれる素材だ。半導体は冷やされると電気を通しにくく、熱されると電気を通しやすくなる。多量の電気を通すことで熱くなった半導体が、さらに過剰な電気通す悪循環が熱暴走の原因だ。

 電気の通し方の変化が、どんな場面で起きているのか想像してみても面白いかもしれない。

参考文献

  • 総務省HPhttps://www.soumu.go.jp/

  • 数研出版編集部. 『改訂版 視覚でとらえるフォトサイエンス 化学図録』. 数研出版.

  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 化学図録』. 数研出版.

  • 数研出版編集部. 『新課程 視覚でとらえるフォトサイエンス 物理図録』. 数研出版.

  • 服部励治. シリーズ「スマホの応用物理」 意外と知らないタッチパネルの原理. 応用物理 2019 88 11 p. 750-751.

脚注

[注1] 無論、無茶をすれば外せないことはないが、危険なので絶対にやめていただきたい。 (本文へ戻る)

[注2] このような構成の電池を化学電池という。化学電池はさらに、充電できない使い切りの一次電池と、充電可能で繰り返し使用できる二次電池とに分類できる。また、化学電池の他に、物理電池という種類の電池もある。太陽電池が物理電池の代表例だ。 (本文へ戻る)

[注3] 例えばコンセントから送られる電気や、モバイルバッテリーが外部電源に相当する。 (本文へ戻る)

[注4] 葉月はモバイルバッテリーを持っていない。持っていないというか、すぐ失くすので持つのを諦めた。なんでみんな失くさないの? (本文へ戻る)

[注5] この仕組みを利用して、マイクの導線に豆電球をつけて、声を出すと光らせることができる。が、導線の改造は当然危険なのでやめておこう。 (本文へ戻る)

[注6] タッチパネル式の携帯電話(=スマホ)が世に出始めた当初、一部の物好きな人が持つアイテムだと思っていたが、まさかこれほどまで普及するとは夢にも思わなかった。 (本文へ戻る)

[注7] 実際には導電膜の上に、さらに保護フィルムでコーティングされているが、解説には不要なのでここでは省かせていただく。 (本文へ戻る)

[注8] 端があるのは線分だが、そこは置いておいてほしい。 (本文へ戻る)

[注9] 電気を通しやすい物質を導体、電気を通しにくい物質を不導体と呼ぶ。濡れてない人体は不導体。カッパは多分……怖いので考えない。 (本文へ戻る)

【著者紹介】葉月 弐斗一

「サイエンスライター」兼「サイエンスイラストレーター」を自称する理科オタクのカッパ。「身近な疑問を科学で解き明かす」をモットーに、日々の生活の「ちょっと不思議」をすこしずつ深掘りしながら解説していきます。

【主な活動場所】 Twitter Pixiv

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