地球が温暖化すればホームランが増える? 気候変動とスポーツの意外な関連が判明

2023.04.14

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、地球が温暖化するとホームランが増える、ということを分析した研究結果だよ!

 

なんか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だけど、これはきちんと解析可能な影響だよ。文化的活動が気候変動の影響を受けることが研究可能な極めて珍しい例だよ!

 

そして、単に面白い研究に留まらず、これは野球ファンでもある研究者の願いも込められている内容だよ。

 

ホームランは科学的に分析可能?

野球で盛り上がる瞬間は色々あると思うけれども、確実に点数を得られるホームランはものすごく盛り上がる瞬間のひとつとも言えるよね!

 

さて、野球でホームランを叩き込むには、もちろん打者としての腕など色々な要因が問われるけれども、影響することが分かっているものの1つとして気温という因子があるよ。

 

つまるところ、ホームランというのは野球ボールが長い飛距離を飛んでいくという物理現象だから、飛距離を伸ばす要因を物理的に解析するというのは原則として可能だよ。

 

気温が上昇すると空気の温度も上昇するよ。空気は高温であるほど密度が低下するため、空気抵抗は減少するよ。ということで、気温が高ければ飛距離が伸びる、というのは物理的にありうるよ。

 

ただし、その影響はどこまでなのか未知数だよ。歴代の野球選手はたくさんいて、お互いの相性や日々の体調もあるし、ルールや道具、新たな投法・打法の開発など、他にも考慮しなきゃいけない点はたくさんあるよ。

 

更に、単純に空気だけを考えても、昼夜、季節、野球場の場所や標高など、様々な条件で変化しうるから、全く同じような状況を見つけることも難しいので、更に研究が難しくなるよ。

 

ということで、野球に限らず、気候変動がスポーツなどの文化的行為にどう影響するのかを調べることは極めて難しい、という問題があるよ。

気温が高いとホームランが増えることが判明!

ホームランは分析可能

バットから打ち出されるボールがどの程度飛ぶのかは、初速と角度、そして空気抵抗によってのみ決定するよ。だから、同じ初速や角度でも、気温次第でホームランになる場合とならない場合というのが現れるよ。また、選手の体調やボールの設計といった、数値化しにくい要因とは無関係に分析ができるよ!

 

学者であると同時に野球のファンでもあるChristopher W. Callahan氏らの研究チームは、1962年から2019年までの10万以上の試合と、2015年から2019年までの22万以上の打球について分析したよ。

 

特に重要なのは打球の分析だよ。メジャーリーグでは2008年よりビデオ判定が導入されており、特に2015年からははビデオの精度が良くなっているよ。

 

これにより、野球ボールの速度や角度など、飛距離を決定する様々な物理的因子が細かく判定することができるよ。この数値は、野球選手個人のパフォーマンスの影響を排除するのに役立つよ。

 

なぜなら、バットで打ち返されて飛んでいく野球ボールの飛距離は、バットから離れていく時の初速と角度、そして空気抵抗によってのみ決定し、野球選手の強弱や体調の善し悪しは関係なくなるからね。

 

このほかにも、ボールの設計や打法と言った要素に関係なく、同じ速度と角度で飛んだボールは、気温が同じならば飛距離も同じだと言えるので、気温の違いのみが飛距離に影響すると考えられるよ。

 

ということで、これらの要素を勘案することで、気温とホームランの出やすさに関係があるのかを、多数の打球を分析することによって調べたよ。

 

ホームランと気温の関係

分析の結果、日中の最高気温が高いほどホームランの数が増えることが判明したよ!気温の影響が大きいデイゲームや屋外球場がより大きく影響することも分かったよ。

 

その結果、2015年から2019年にかけての間、気温が1℃上昇すると、ホームランの確率が1.83%上がっていたことが分かったよ!

 

この時期の1試合の平均ホームラン数や、飛球1回あたりのホームラン数に換算すると、1℃の上昇が1試合に約0.4本のホームランを追加するという結果となるよ!

 

気温によるホームラン数の変化は、別の統計からも裏付けられるよ。例えば、シカゴのリグレー・フィールドは屋外の野球場で、ナイトゲームをほとんどしない傾向にあるよ。

 

屋外の昼間というのは気温の変化が激しく、上昇しやすい傾向にあることから、実際に暑い時期はホームラン数も多くなることが分かったよ。

 

それとは逆に、セントピーターズバーグにあるトロピカーナ・フィールドはドーム式の屋内球場であり、気温が調整されているので、屋外が猛暑であってもほとんどホームラン数は変化しなかったよ。

 

地球温暖化による将来的なホームランへの影響

もしこのまま地球温暖化が進行した場合、屋内球場の方がより影響が小さい傾向にあるよ。とはいえ屋内球場というのは次善の策であり、地球温暖化それ自体の対策の方がいいのは言うまでもないよ。

 

トロピカーナ・フィールドに限らず、屋内球場は屋外球場と比べて、あるいはナイトゲームはデイゲームと比べて、気温変化によるホームラン数の増減があまり見られない傾向にあることが分かったよ。

 

これらのことを総合すると、2015年から2019年の期間中は500本、全ホームランの約1%が、気候変動による気温上昇の影響を受けて発生したものだとCallahan氏は考えているよ。

 

もし、このまま温室効果ガスの排出が続き、地球温暖化が進行した場合、気候変動の影響によるホームランは全ホームランの10%を占めるまでになるとも考えられるよ!

野球を通じて世界的問題に興味を持ってほしいという願い

もちろん、ホームランが増えるからって地球温暖化は良いものではないことは確かで、特に異常な熱波の増加は、選手と観客の両方に深刻な影響を与えるよ。

 

ナイトゲームや屋内球場での試合は試合の公平性と共に、異常な熱波から選手や観客を守るのに繋がるけど、これはあくまでその場しのぎの次善策、最も良いのは気候変動対策なのは言うまでもないよね。

 

実際、Callahan氏らの研究チームがこの研究を行ったのは、単に野球ファンである以上に、野球という非常に身近なテーマを通じて気候変動に関心を持ってほしいという願いがあるよ。

 

ブラックソックス事件[注1]、ジャッキー・ロビンソンのメジャーデビュー[注2]、ミッチェル報告書[注3]と言った数々の出来事は、野球界のみならず、アメリカ社会全体に非常に大きな影響を与えたよ。

 

これらは、野球が単にスポーツであるのみならず、アメリカの社会や文化、ひいてはアメリカ人の精神にも強く結びついている重要な要素であるからと研究チームは考えているよ。

 

さっきも書いた通り、スポーツと気候変動との関連を調べるの非常に難易度が高く、今回も気温上昇とホームランという関連性を調べる上で色々とデータが揃っていたことから、例外的に研究が可能だった事例と言えるよ。

 

ということで、この種の研究は珍しいので、ぜひ野球のような身近な話題で気候変動という重大な問題に関心を持ってもらう1つのきっかけとしてほしい、というのがCallahan氏らの願いだよ!

文献情報

[原著論文]

  • Christopher W. Callahan, et.al. "Global warming, home runs, and the future of America’s pastime". Bulletin of the American Meteorological Society, 2023. DOI: 10.1175/BAMS-D-22-0235.1

[参考文献]

脚注

[注1] ブラックソックス事件 ↩︎
1919年、メジャーリーグのワールドシリーズで発生した八百長事件。シカゴ・ホワイトソックスがシンシナティ・レッズに敗退し、レッズがワールドシリーズを制覇する結果となった後、ホワイトソックス側の選手が賄賂を受け取ってわざと負けたことが明らかになった。関与した8人の選手は裁判では無罪となったものの、野球界からは永久追放処分となった。野球を管理する組織が一新され、後の文学・映画作品にたびたび題材にされるなど、大きな影響を残した。

[注2] ジャッキー・ロビンソンのメジャーデビュー ↩︎
1890年代より、黒人選手を禁止するメジャーリーグの規定は存在しなかったものの、長らく続いたアメリカ社会の人種差別の影響で、黒人選手は数十年存在しなかった。そういった中で、1945年にブルックリン・ドジャースと契約したのがジャッキー・ロビンソンであった。モントリオール・ロイヤルズに1946年のシーズンから参加し、翌1947年からメジャーデビューとなり、近代メジャーリーグでは初の黒人のメジャー選手となった。この影響は人種差別問題に非常に大きな影響を与え、野球のみならず、多くのスポーツに黒人選手がデビューするきっかけともなったとされている。

[注3]ミッチェル報告書 ↩︎
元アメリカ合衆国上院議員のジョージ・J・ミッチェルによってまとめられ、2007年に発表された、メジャーリーグにおける運動能力工場薬物の使用実態調査の報告書。この前後に起きたドーピング問題と合わさり、野球界のみならず多くのスポーツで薬物使用に関する大きなスキャンダルに発展した。ミッチェル報告書では89名の野球選手が名指しされていたが、調査に非協力的であった選手会の姿勢や、事前に抜き打ち検査が知らされていた選手もいたことから、実際にはもっと多くの選手が関与していた可能性もある。

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

このライターの記事一覧

彩恵りりの科学ニュース解説!の他の記事