メンヘラとはどういう意味?どういった特徴があるのか?

2023.04.25

 数年前からよく耳にする「メンヘラ」。実際あなたの周りにも、思い浮かぶ人がいるんじゃないでしょうか。もしくは、自分に当てはまると思う人もいるかもしれません。ここでは精神分野の視点から、そういった人の行動心理を読み取っていこうと思います。

※これは精神疾患の臨床現場で活動する個人の見解であり、精神科分野での学術的な研究結果ではありません。

「メンヘラ」という言葉の意味の広さ

 「メンヘラ」という言葉は、特定の精神疾患を指すわけではありません。ネットスラングだったものが、いつからか メンヘラ=「病んでいる人」、「心に何かしらの問題を抱えている人」という意味合いで使われるようになりました。「病んでいる人」というと、病気だと思うでしょうか。

 実際に精神科で診断基準が設けられている疾患として、「メンヘラ」に該当する疾患名はありません。「メンヘラ」という言葉が使われる時の多くは深い意味合いはなく、入院や専門的な治療を必要としない場合も見られます。

 ただ、診断名はないものの、特徴として近い傾向にあると思われているものはあります。それがパーソナリティ障害です。パーソナリティ障害にはいくつか種類があります。その中でも、俗にいうメンヘラに近いと考えられるのは ”境界性パーソナリティ障害” です。臨床では、”境界例”と呼ぶこともあります。

 特徴としては、リストカットや薬の過剰摂取などをし、それを近親者に知らせて試すような発言をしたり、急に怒り出したり人や物に当たったりして自分の思い通りに事を運ぼうとしたりします。自分の感情を相手の感情に巻き込もうとするのも特徴の一つです。

 しかし、俗にいう「メンヘラ」が全員境界性パーソナリティ障害というわけではないです。境界性パーソナリティ障害の診断基準は、DSM-4DSM-5 という国際基準で定められています。自分がその診断基準を満たしているか知りたい、受診を悩まれたり検討されたりしているといった方は、パーソナリティ障害について調べたり、診断基準をご覧になるのも良いかと思います。

 ただ、振り回すようですが診断が全てでもありません。ガイドラインはあるものの、最近は特に社会背景や個人の生活歴によって定型通りに当てはまらない例も多くなってきています。大事なのは、本人や周囲が「診断や指標があった方が楽か」、「専門家の手助けを必要としているか」だと個人的には考えます。

行動の背景

 周囲の人は、繰り返される衝動的な行動に振り回され、疲労したり辟易としたりすることもあると思います。では、なぜそのような行動に至るのでしょうか。

①強い見捨てられ不安

 幼少期に親や養育者から十分な愛情を感じられなかった場合、愛着障害(※)を生じることがあります。そうすると、見捨てられることに対して無意識に強い不安を感じていることが多いです。自分の価値を信じきれないので、相手の言動に敏感になり、離れていかないか試そうとします。
 ※愛着障害…幼少期、養育者との間に何らかの理由で心の結びつきが感じられず、愛着の形成に問題が生じていること。養育者は実父や実母に限らず、育ての者を指す。

②感情のブレーキが効きにくい

 周囲の様子にとても敏感なため、傷つきやすいという特徴があります。そして傷ついた時ほど、場所や状況に関係なく感情のブレーキが効きにくくなります。怒りにとらわれて過剰に相手を攻撃してしまうことがありますが、その裏には、自分を守ろうとする心の防衛機能もはたらいていると考えられます。

③自己を傷つけることでの存在確認

 自傷行為は心の底にある自己否定感や、自分が何者かわからないという空虚感により引き起こされます。過剰なアルコール摂取や薬物乱用、場当たり的なセックス、万引きや過食などもこれに含まれます。スリルを伴う行動によって自分の存在を確認しているのです。

自己や周囲の向き合い方

 自傷行為や衝動的な行動をすることを”行動化”と言います。行動化にはどういった心構えで接したらいいのでしょうか。本人、周囲の向き合い方を紹介していきます。

〈本人と周囲〉

○クールダウンする
 本人は感情の起伏が激しいため、小さなことにも過剰に反応します。しかし、家族や周囲もそれに対して過剰な反応をしてしまうと、収拾がつかなくなります。それを避けるために、家族や周囲は感情的になりすぎず、冷静に対応することが必要です。本人も徐々に落ち着きを取り戻してきます。15分くらい経つと、意外にもケロッとしていることも少なくありません。

○人生の主体性を取り戻す
 家族関係の影響により、本人の気持ちではなく家族や周囲の判断基準で物事を考えてきたことが多いです。そのため、自分に否定的で、他責思考になりやすくなります。悪いことや危険なことをした時は自分で責任を取ってもらったり、自分が本当はどうしたかったのかを考えたりすることで、本人の主体性を取り戻します。


〈周囲〉

○否定や判断をせずに話を聴く
 行動化は少しでも自分のことをわかってほしい、聞いてほしいという表れです。否定的な言葉は、本人から主体性を奪うことにつながっています。主体性を取り戻すには、周囲が行動の背景にある思いを汲もうとすることです。見放したり表面的な理解を示すのではなく、その行動自体は良くないと伝えても本人の気持ちは否定せずに話を聴く(傾聴する)ことが大切です。

○安易な激励や押し付けた説得をしない
 「がんばれ」という言葉や個人的なひとりの価値観による説得は、本人に「自分のことを理解してもらえなかった」という気持ちを抱かせてしまいます。周囲の価値観で説得せず、何をどのように行動したらどんな結果が得られるのかを具体的に説明し、”共にがんばる”ことを示します。

○対応を変えない
 周囲の人は、最初は本人の希望に応えようと頑張るのですが、だんだんと疲れてしまい距離を置こうとしたり、拒否的になったりします。ですが、こうなると本人は「やっぱり私のことはどうでもいいんだ」と思ったり、「あの時はこうしてくれたのに」と行動がエスカレートするかもしれません。そうならないためには最初から、「できないことはできない」と示しておくことも手です。対応を決めておくことは、対応する人の精神的疲労を少なくする効果もあります。

○「またか」という態度は逆効果
 リストカットや過剰服薬などを繰り返す場合でも、死に至らずに軽傷で済むことは多いです。しかしそれに対して「またやったの」という態度や言葉は、本人の孤独感や空虚感を強めます。リストカットが行われた場合には、丁寧に身体に触れ、そっと傷の手当てをします。その際、言葉は多くいりません。「大切に思っている」「大事に至らなくてよかった」と心の中で思うことは、顔や態度に出ます。本人は元々周囲の顔色に敏感なため、この『大切に思う気持ち』は自然と伝わります。


性格は変わる?

 一般的には「性格」は変わらないと考えられてきましたが、近年の研究では変化するものだとも言われるようになってきました。遺伝や気質的素因といった生物学的要素の「気質」と、心理社会的要素の「性格」が混ざりあい統合したもの=「パーソナリティ」として考えられています。周囲や自身が変わろうと努力することで、性格が変化したり、パーソナリティが『障害』から『個性』として捉えられるようになったりすることもあります。自分や周囲が現在悩まれていたとしたら、その行動や思いに丁寧に向き合うことで、少しだけ生きやすくなることがあるかもしれません。

参考文書

岡田尊司『パーソナリティ障害がわかる本』ちくま文庫

中井久夫・山口直彦『看護のための精神医学』医学書院

精神科認定看護師の会 マニュアルガイド

厚生労働省 自殺未遂患者への対応 P17〜22

【著者紹介】山川 うみ

都内にある看護大学を卒業後、精神科看護師として勤務。主に慢性期の病棟で日々精神科看護に従事しています。尊敬する師は中井久夫先生、宮子あずさ看護師です。