2023年の干支、「ウサギ」の名を持つ魚類大集合!

2023.01.01

 2023年、新たな年を迎えた! 2022年は皆さんにとってどんな年であっただろうか? 2022年は年明け早々からまん延防止等重点措置が適用されるなど、コロナ禍の厳しい状況が続いていたが、4月以降は大規模な行動制限は発出されなくなり、世間的にも少し活気が戻ったような気がした。私個人の話では、第100回目となるコミックマーケットに参加したり、大洗水族館にレンタル博士で出張したりしたが……依然として続くコロナ禍が早く終わり、もっとあちこちで活動しやすくなることを願うばかりだ。2022年のマンボウ研究的には、ウシマンボウが世界最重量硬骨魚であることが確定となり、10月には北海道に打ち上げられたウシマンボウと世界最重量硬骨魚の記録を更新したアゾレス諸島で捕獲された2744kgのウシマンボウが世間で話題になった。マンボウ以外の種も存在することが世間に知れ渡り、個人的には嬉しかった。今年も地道にマンボウ類の基礎的な研究を進展させ、皆様の豆知識が増えるような話をここでできれば嬉しい。

 

”ウサギ”を含んだ標準和名の魚類を調べよう

 さて、年始め一発目の記事は、新春企画として、干支にちなんだものを取り上げたいと思う。2023年の干支は「ウサギ(卯)」であるので、ウサギの名を持つ標準和名の魚類を調べてみた。本村(2022)には日本に生息している魚類全4723種がリストされている(2022年11月時点)。標準和名が無い魚類もあるが、これらのうち、ウサギの名前がある種を調査すると……ウサギアイナメ、セダカダイミョウサギ、ダイミョウサギウサギトラギスの4種が見付かった! 数は少ないもののウサギの名を持つ魚類はいたのだ! しかし、どの種もあまり馴染みのない魚のように思える。一体どんな魚なのだろうか? 各種の知見を調べてみた。

 

ウサギアイナメ

 ウサギアイナメは、アイナメ科アイナメ属に属する魚で、北海道などの岩礁域に生息する北方種だ。尾鰭後縁が丸いこと、第4側線が長く臀鰭起部をはるかに超えること、鱗が小さく側線有孔鱗数が97つ以上であることで近縁種から識別される。メスは海藻に卵を産み付け、オスが一ヶ月ほど外敵から受精卵を保護する。標準体長60cm程度になる食べられる魚。ウサギの由来は、学名 Hexagrammos lagocephalus のlagocephalusがギリシャ語で「ウサギの頭」を意味することから付けられたとされる。

ウサギっぽい頭かと聞かれたら……

うーん、微妙……
私には分からない。

気になった方は是非ネットで画像検索してみて欲しい。ちなみに、lagocephalusの学名を持つ魚類は他にもいて、ルリボウズハゼ Sicyopterus lagocephalus、クロサバフグ Lagocephalus cheesemanii、カナフグ Lagocephalus inermis、ドクサバフグ Lagocephalus lunaris、センニンフグ Lagocephalus sceleratus、シロサバフグ Lagocephalus spadiceus、カイユウセンニンフグ Lagocephalus suezensis が日本に生息している。ウサギぽい頭の名を持つ魚がこんなにいるとは何とも興味深い。

 

ダイミョウサギ

 ダイミョウサギは、クロサギ科クロサギ属に属する魚で、千葉県~三重県、瀬戸内海西部、山陰、九州北西岸の沿岸の砂泥底に生息している。両眼間前方にU字状の凹みがあること、生鮮時に腹鰭・臀鰭・尾鰭下部に鈍い黄色があることで近縁種から識別される。標準体長15cm程度になる食べられる魚。漢字にすると大名鷺になり、たまたまウサギと文字が並んだだけで、ウサギ的な要素はない。ちなみにサギと言えば鳥類の方が有名だが、これは魚類だ。

 

セダカダイミョウサギ

 セダカダイミョウサギは、クロサギ科クロサギ属に属する魚で、静岡県~鹿児島県(太平洋側)の汽水域の砂泥底に生息している。ダイミョウサギと混同されていたが、2007年に新種記載された比較的新しい魚。両眼間前方にU字状の凹みがないこと、生鮮時に腹鰭・臀鰭・尾鰭下部に鮮やかな黄色があることで近縁種から識別される。標準体長17cm程度になる食べられる魚。漢字にすると背高大名鷺になると思われ、たまたまウサギと文字が並んだだけで、こちらもウサギ的な要素はない。

 

ウサギトラギス

 ウサギトラギスはホカケトラギス科ヒメトラギス属に属する魚で、南シナ海北部から南日本にかけての海底に生息している。第1背鰭が著しく高く伸長すること、オスの吻端にひげがないことで近縁種から識別される。標準体長約2.5cm以上の個体では、オスの第1背鰭がメスよりも著しく伸長する。標準体長5.5cm程度になる魚。卵径は約0.1~0.5 mm 、抱卵数は146~470 個の範囲が確認されている。おそらく食べても問題ないと思うが、食べたという情報が見付からない。ウサギの由来は、長く伸長する第1背鰭からウサギの耳を連想したためとされているが、この情報が載っている文献を探し出せなかった。しかし、おそらくそうであろうことは写真を見ればわかる。

 

他にもこんなに

 標準和名ではないが、地方名では他に、ココノホシギンザメを「うさぎざめ」、ナヌカザメを「うさぎざめ」、ツバクロエイを「うさぎざめ」と呼ぶという知見がインターネット上で見付かった。また、日本近海にいない海外の魚類では、ウサギニベ、ウサギギギという標準和名が使われている魚類がいた。海外名では、アイゴが「Rabbitfish」、トビハゼが「海兎」と呼ばれるとの情報も見付かった。もっと探せば他にもウサギ的な名を持つ魚類が見付かるかもしれないが、これらがメジャーどころなようだ。年始の水族館ではここに挙げた魚が干支にちなんだ魚としてピックアップされて展示されることと思われる。本記事を読んでから水族館に行かれる方は、是非豆知識として一緒に行く方に披露して欲しい。

 

~今日の一首~

 兎年
  標準和名
   日本産
    魚類2種だけ
     ウサギにちなむ

 


参考文献

中坊徹次(編).2013.日本産魚類検索 全種の同定 第三版.東海大学出版会,神奈川.

熊木慧弥・幸大二郎・遠藤広光.2022.日本とその周辺海域におけるホカケトラギス科ウサギトラギスの分布状況および性的二形の新知見.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 24: 9-14.

本村浩之.2022.日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名.Online ver. 18(2022年11月21日更新).

 

【著者情報】澤井 悦郎

海とくらしの史料館の「特任マンボウ研究員」である牛マンボウ博士。この連載は、マンボウ類だけを研究し続けていつまで生きられるかを問うた男の、マンボウへの愛を綴る科学エッセイである。

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