肝臓に赤血球を集めて透明化!「ガラスガエル」の透明化の原理が判明

2022.12.29

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

 

今回の解説は、寝ている間は透明化する珍しい陸棲脊椎動物「ガラスガエル」が、どのように透明化するのかを解明した研究だよ!

 

陸上にいる脊椎動物は、身体の透明化をするのは極めて難しく、唯一の例がガラスガエルだったんだけど、なぜそれができるのかまでは分かっていなかったよ。

 

今回、血液を透明化するために、休眠時に肝臓に赤血球の9割を集める能力があること、活動時には障害なく再放出ができることが判明したよ!

 

このような生態は極めて珍しく、更に研究を進めれば血栓の予防や末梢組織の維持などで医学的応用ができるかもしれないよ!

 

ガラスガエル サムネイル

陸上の脊椎動物は透明化が難しい!

海にいる生物には、ウナギの稚魚やクラゲのように身体の透明度が高い動物がいるよね?これは透明になることによって捕食者の眼を逃れる戦略と考えられているよ。

 

ただ、身体の透明化と言う戦略は、水中の生物にはよく観られるけど、陸上ではほとんど見かけることはないよ。大きな理由は、複雑な生物の要とも言える血液にあるよ。

 

血液は赤いというイメージがあると思うけど、これは酸素を運ぶ細胞「赤血球」の色を見ているんだよ。赤血球を除くと、血液を構成する細胞や成分の多くは透明だよ。

 

赤血球が赤いのは、赤い色の由来となる鉄イオンがあるからで、正確にはヘモグロビンに含まれるよ。ヘモグロビンの鉄イオンが酸素と結合し、効率よく酸素を運搬する仕組みだよ。

 

悪いことに、血液という赤色は、陸上に大量に存在する植物の色である緑色の補色 (反対色) であるから、身体を透明化しても血液の色が良く目立ってしまうよ!

 

一応、ヘモグロビンを持たなくても血液は酸素を運べるけど、効率は10%以下に落ちてしまうよ。だから他の動物と比べ酸素要求量の高い脊椎動物は、基本的にヘモグロビンを持っているよ。

 

幼体の段階ではヘモグロビンを持たない脊椎動物は稀にいるけど、これは成長によりヘモグロビンを持つよ。この唯一の例外は、南極海に生息するコオリウオ科 (Channichthyidae) だね。

 

コオリウオ科は成体でもヘモグロビンを持たない唯一の脊椎動物だけど、それはコオリウオ科に観られる身体構造の工夫[注1]と、何より体積当たりの酸素量が多い海水という環境に由来するよ。

 

陸上は、えら呼吸よりもはるかに効率の悪い肺呼吸をしなければならないから、ヘモグロビンなしで生きていく、と言うのは基本的に不可能だよ。

 

だから、陸上の脊椎動物が色で捕食者の眼を逃れるには、周辺環境に似た体表色を持つ保護色の戦略をとることが多く、血液の色は皮膚の下に隠されるよ。

 

寝ている間だけ透明化する陸上脊椎動物「ガラスガエル」

脊椎動物の透明化は難しい

透明な生物は、脊椎動物以外にはたくさんいるけど、生物としての仕組みが違いすぎるので単純比較はできないよ。透明な脊椎動物の大半は水中にいて、しかも幼体の時にしか現れない性質で、唯一の例外のコオリウオ科は特異な生態と環境がそれを実現しているよ。だから陸上で達成しているガラスガエルはかなりの例外と言えるんだよ。 (画像引用元 (①コオリウオ科) : uwe kils (WikiMedia Commons) / (画像引用元 (②ガラスガエル) : AMNH)

 

そんな厳しい条件の中で、ほぼ唯一身体の透明化に成功している脊椎動物が、アマガエルモドキ科 (Centrolenidae) の一部の通称である「ガラスガエル (Glass frog)」の仲間だよ!

 

150種類ほどいるガラスガエルの仲間は、夜間の活動中は少しだけ透明感がある以外は他のカエルとあまり変わらないけど、日中に寝ている間は驚くほど身体が透明になってしまうよ!

 

比較写真を見ればはっきりわかるように、活動時には血管が見え、全体の色も赤色が混ざって不透明になるけど、休眠時には血管は見えず、身体も元々の緑色を残して透明化するよ!

 

ガラスガエルの透明化は、大きな葉の裏側で寝ている時に捕食者に襲われないようにするための戦略と考えられていて、透明にならない骨・目・内臓を除くと驚くほどカモフラージュしているよ!

 

ではなぜ、ガラスガエルは多くの障害を乗り越えて透明化を実現しているのか、特に透明化が難しい血液をどのように透明にしているんだろうね?

 

デューク大学などの研究チームは、ガラスガエルの1種である「フライシュマンガラスガエル (Hyalinobatrachium fleischmanni)」を対象に研究を行ったよ。

 

ガラスガエルの観察

ガラスガエルを観察してみると、休眠時は明らかに血管が見えなくなっていることが分かるよ。光を通さず、はっきりとした赤色の元となる赤血球が消えることが透明性のカギであると分かったよ。 (画像引用元: AMNH)

 

まず、数匹の個体を採集して観察を行ったところ、休眠中の身体の透明度が34%から61%と、活動時と比べて2倍から3倍も透明度が高まることが実測されたよ。

 

何より重要なのは、活動時にははっきり見える血管が、休眠時には見えなくなっていることが分かったよ。つまり、寝ている時のガラスガエルは赤血球が消えているらしいことが分かったよ!

 

消えた赤血球は、起きて活動する時には速やかに復活することから、これは赤血球が一時的に身体のどこかに収納されていることが示唆されるよ。

 

ストレスを与えずに赤血球を可視化する「光音響効果顕微鏡」

では、実際に赤血球が消えているのかと、どこにしまわれているのかが次の問題だけど、これを観察する段階で研究は壁にぶつかってしまったよ。

 

ガラスガエルが透明化するのは休眠している時で、起きている時はもちろん、ストレスを受けていたり麻酔で眠らせても透明化はしないよ。

 

これは、血液成分を観るための造影剤などの注射も透明化の妨げになることを意味していて、赤血球がどこに移動しているのかを追跡することができなかったよ。

 

この困難を解決するには、研究者がカエルの特徴的な緑色の由来であるビリベルジンについて調べていた際、「光音響効果顕微鏡」という技術を知るまで待たなければならなかったよ。

 

物質に光を当てると、物質を構成する分子にエネルギーが吸収され熱を持つよ。熱により物質はわずかに膨張し、音響波とよばれる音波を発するよ。

 

光を当ててから音響波が到達するまでの時間を測ることで、音響波を発した物体の位置を正確に特定できることが、光音響効果顕微鏡の基本的な仕組みだよ。

 

重要なのは、赤血球のように色を持つ物体なら、照射する光の波長を調整することで、造影剤などを使うことなく狙ったものを可視化することができる点だよ!

 

また、この方法で生じる熱は極めてわずかだから、寝ているガラスガエルに何のストレスを与えることなく、体内の赤血球の位置を可視化することができるよ!

 

赤血球の9割が肝臓へ移動!

ガラスガエルの休眠時の赤血球の可視化

麻酔などのストレスがかかると、ガラスガエルは透明化しないことから、これまで休眠状態の観察は困難だったよ (画像右側) 。光音響効果顕微鏡を使うことで、休眠しているガラスガエルにストレスを与えることなく、血管内にある赤血球の分布を可視化することができたよ (画像左側) 。その結果、赤血球の約9割は肝臓に集中し、他の血管にはほとんど残っていなかったと分かったよ。 (画像引用元: Phys.org)

 

観察の結果、休眠中に大半の赤血球は肝臓に移動していることが分かったよ。その割合はなんと89%!だから肝臓自体もパンパンに膨らみ、40%も増大することが分かったよ!

 

肝臓そのものはグアニンの結晶に覆われているので、光を反射して白っぽく見えるよ。だから赤血球でいっぱいの、本来は赤いはずの肝臓を効果的に隠すことができるよ。

 

これによりガラスガエルは、1日12時間はほとんど血液循環なしに生存し、休眠中は赤血球を肝臓に集め、活動時に再放出するのを繰り返していることが分かったよ!

 

ガラスガエルのこの驚くべき生態により、陸上では困難な身体の透明化を実現していることが分かったけど、この発見は更なる発展が期待できるよ!

 

血液をどこか一カ所に集めて留めておくのは、赤血球の凝集によって血栓が生じるという致命的な問題を招くことに繋がるから、通常は避けるべき行動だよ。

 

ところがガラスガエルは1日1回はこれを行って無事生存していることから、赤血球を極端に集めても凝集しない何らかの保護機能を持つと考えられるよ。

 

また、赤血球を集めること自体も大変で、末梢組織[注2]の赤血球を移動させたり、それに伴う末梢組織の損傷を防ぐこともまた大変だと見られているよ。

 

ガラスガエルがこの極端な生理機能を持った理由も不明で、もしかするとこれの解明の過程で血液の凝固や末梢組織の損傷を防ぐメカニズムを解明できるかもしれないよ。

 

もしかするとそのメカニズムは、人間において、血栓の形成を防いだり、がん細胞への血流阻害によるがん治療など、いろんな面で応用ができるかもしれないよ!

 

文献情報

[原著論文]

  • Carlos Taboada, Jesse Delia, Maomao Chen, Chenshuo Ma, Xiaorui Peng, Xiaoyi Zhu, Laiming Jiang, Tri Vu, Qifa Zhou, Junjie Ya, Lauren O’Connell & Sönke Johnsen. "Glassfrogs conceal blood in their liver to maintain transparency". Science, 2022; 378 (6626) 1315-1320. DOI: 10.1126/science.abl6620

[参考文献]

注釈

[注1] コオリウオ科に観られる身体構造の工夫 ↩︎
コオリウオ科は南極海の低温海水中に生息しており、代謝が極端に低いため、酸素の要求量が元々少ない。また酸素が必要なタンパク質のミオグロビンを作る能力を欠いており、酸素を節約している。血管系は強化されており、大きな心臓、多い心拍数、量の多い血液、末端部まで太い血管により、ヘモグロビンを欠くことによる酸素不足に対応している。赤血球が存在しないことにより血液は粘性が低くなり、低い血圧でも効率的に血液を送り出せる。心臓に酸素や栄養を送る冠状動脈は存在せず、海綿状の心筋が血管から直接酸素を取り込む他、皮膚からも補助的に得ていると考えられている。更に、酸素を大量に消費するミトコンドリアはミトコンドリアは心筋細胞内では巨大なサイズとなっており、表面積を増やすとともに、細胞の外側との距離を縮めることで、酸素を効率的に取り込む工夫であると考えられている。

[注2] 末梢組織 ↩︎
末梢は中枢に対する用語。ここでは心臓や太い血管から見て遠い側、筋肉や内臓などを指す。

 

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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