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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回の解説は、真核生物の新しい分類で、捕食性微生物を特徴とする「プロヴォラ」の提唱についてだよ!
真核生物の大分類はここ10年20年で続いていて、新しい分類が提唱されているよ。今回の研究は、この議論に1つの重大な意見を提起しているよ!
CONTENTS
地球に満ちている生命を分類することは、当時の科学的知見で行ったカール・フォン・リンネの三界説[注1]を皮切りに、その後は時代を下るごとに詳細に研究されるようになったよ。
現在広く認められているのは、生命の一番大きな分類を「真核生物」「真正細菌」「古細菌」の3つの「ドメイン」に分類するものだよ。ちなみに私たちは真核生物に属するよ。
この真核生物の下には、長らく「界」という分類が置かれていたよ。これはリンネの時代からのいわば伝統と言えるもので、例えば動物界とか植物界とかが提唱されていたよ。
しかし、遺伝子を調べる技術が進歩したことによって、ドメインと界の間でも生物は分類可能であることが分かってきたことから、2000年代から生物の大分類は大きく変更されたよ!
現在では、真核生物の大分類に「スーパーグループ」と呼ばれるものが設けられ、広く認められているスーパーグループは6つ前後[注2]に分ける分類方法だよ。
なんで6つ前後という曖昧な言い方なのかと言うと、どれを独自のスーパーグループに分類させるのか、という点に議論がある系統が多数存在するからだよ。
どの生物がどのスーパーグループに属するかは、遺伝子の配列のどこが共通でどこが違うか、という点で表されるけど、どの程度違えば違うグループなのか、という点に議論があるよ。
そのため、複数の系統をそのまま独自のスーパーグループにするのか、それとも1つにするのか、という意見がまだまとまっていない系統が複数あるよ。
また、どのスーパーグループにも属せない、全く新規のスーパーグループを構成すると主張させる生物もよく発見されていて、これは更に悩みの種となってしまうよ。
このような生物は遺伝子の特徴こそ取れても、その他の生態についてはほとんど理解されていないことが多く、人工的な培養で数を増やすことすらできないこともしばしばあるよ。
このようなスーパーグループの候補は数十もあり、これらが今までのスーパーグループに統合されるか、それとも新規のスーパーグループになるのかはいろいろな意見があるよ。
こういう状況の中で、ブリティッシュコロンビア大学などの研究チームは、新しい真核生物のスーパーグループである「プロヴォラ (Provora)」の新設を提唱したよ!
このプロヴォラの提唱となる背景には、2017年に発見された「アンコラシスタ・ツウィスタ (Ancoracysta twista)」という生物の研究から始まったよ。
水族館のサンゴの中で発見されたこの微生物は、別の微生物を積極的に捕食するという生態を持っているけれど、より詳細な研究により面白い特徴が判明したよ。
細胞の微細な構造、ミトコンドリアDNAの長さ、核DNAの特徴など、様々な特徴がこれまで知られているどの生物とも似ていないことが分かったんだよ。
その後の研究で、新たに発見された種や、既に知られている種の検討で分類が変更されるなど、追加で6種がアンコラシスタ・ツウィスタと似た特徴を有することが判明したよ。
これらの生物はどれも捕食性で、獲物を齧り取るような "歯" を持つ「ニブレリディア (Nibbleridia)」と、身体全体で獲物を包み込む「ネブリディア (Nebulidia)」に大別されるよ。
これは行動の違いだけでなく、細胞の細かい構造や遺伝子の違いなどでも分類を分けられるくらい、同じスーパーグループに属しつつも特徴が異なっているよ。
そしてどちらも、捕食の積極性は、プロヴォラを他の微生物と一緒に入れておくと、わずか1日2日でほとんどが全滅してしまうくらいで、積極的に遊泳と捕食を行う生物だよ。
そしてプロヴォラは多様性に富んでいて、外洋の表層、深海の海底、陸上の汽水湖など、水温、塩分濃度、光の有無などが異なる世界中の様々な水に生息しているよ。
ただ、プロヴォラはその地域での生息数が少ないことから、世界中にいながら、今まで生物学者の目を逃れてきたと推定されているよ。
さて、プロヴォラが新しいスーパーグループを構成すると主張された背景には、培養した上で遺伝子を調べるという、中々できなかった成果があったからだよ。
この研究はロシア・カナダ・フランス・イギリスの共同研究で、COVID-19やウクライナ侵攻などの出来事の影響を受けたけど、どうにか発表までこぎつけたよ。
真核生物は、時に見た目や特徴が似ていなくても、遺伝子を見ると近い関係にある、ということがしばしばあるから、特定の部分の違いを比較するよ。
よく使われるのは「18S rRNA」と呼ばれるRNAの領域で、この部分は異なる生物間でもあまり違いがないことで知られていて、例えばヒトとモルモットでは6塩基対しか違いがないよ。
これに対しプロヴォラは、他のどの生物と比較しても18S rRNAに170塩基対から180塩基対の違いがあると、極めて大きな違いがあることが分かったよ!
これほど大きな違いを示していることから、プロヴォラは既存のどのスーパーグループにも属さない、全く新しいスーパーグループを構成していると研究者は主張しているよ!
この研究では、これまで詳細が不明だったいくつかの生物が、全く新しい分類群に属するという、中々重大な指摘をしているよ。
真核生物の多様性は年々その広大さが明らかになっていて、その広さを知ることは、真核生物の進化と分岐がいつどのように起こっていたのかを知る手掛かりとなるはずだよ!
[原著論文]
[参考文献]
[注1] カール・フォン・リンネの三界説 ↩︎
リンネの唱えた三界説では、自然界を動物界・植物界・鉱物界の3つに分けていました。生物ではない鉱物を含むのは、当時の博物学の知見に基づく、生物以外も含めた自然界の大分類として提唱されたためであるという背景がある。ただし現在でも、鉱物の分類は生物のような分類を行う習慣がある。また、当時は微生物や細菌は未知の存在だった。
[注2] 広く認められているスーパーグループは6つ前後 ↩︎
何がスーパーグループであるか、という議論は現在でも続いている。広く認められているのはTSAR・ハプティスタ・クリプティスタ・アーケプラスチダ・アモルフェア・CRuMs・ヘミマスティゴフォラの7種類。ただしTSARはSARとテロネミア、アモルフェアはオバゾアとアメーボゾアがそれぞれ単独のスーパーグループであるという意見がある。その他、アンキロモナディダは単独のスーパーグループ、ディスコバ・メタノナダ・マラウィモナディダは1つのスーパーグループであるエクスカヴァテスに区分されるという意見もある。