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みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!
今回は、みんな大注目!2022年ノーベル化学賞解説だよ!
まず、今回の受賞者と授賞理由は以下の通りだよ!
2022年10月5日、スウェーデン王立科学アカデミーは、本日、2022年のノーベル化学賞を以下の者に授与する事を決定しました。
キャロライン・R・ベルトッツィ (Carolyn R. Bertozzi)
モーテン・メルダル (Morten Meldal)
K・バリー・シャープレス (K. Barry Sharpless)
「クリックケミストリーと生体直交化学の発展に対して」
キャロライン・ルース・ベルトッツィ (Carolyn Ruth Bertozzi)
アメリカ合衆国、マサチューセッツ州、ボストン出身。1966年10月10日生まれの55歳。アメリカ合衆国、カリフォルニア州、スタンフォード、スタンフォード大学所属。
賞への貢献度: 1/3
モーテン・P・メルダル (Morten P. Meldal)
デンマーク出身。1954年1月16日生まれの68歳。デンマーク、コペンハーゲン、コペンハーゲン大学所属。
賞への貢献度: 1/3
カール・バリー・シャープレス (Karl Barry Sharpless)
アメリカ合衆国、ペンシルベニア州、フィラデルフィア出身。1941年4月28日生まれの81歳。アメリカ合衆国、カリフォルニア州、ラホヤ、スクリプス研究所所属。
賞への貢献度: 1/3
2001年にも「不斉触媒による酸化反応に関する研究」でノーベル化学賞を受賞
18世紀に近代化学が誕生して以来、私たちの化学はもっぱら自然の模倣を探求してきた、と言ってもいいくらい、自然界の化学は興味深いものだよ。
様々な生物が生み出す生体分子は、病気の治療薬になったり、特定の化学反応を制御するなど、様々な機能が見つかっており、スゴく有益な物質が多数存在するよ。
もちろん、これを天然から取り出すのはスゴく非効率なので、人工的に合成し大量生産することで、私たちが身近に使えるようにしたいところだよ。
ところが、生体分子はしばしば構造が極めて複雑で、中々簡単に合成できないという課題が山積しているよ。化学者は効率的にこれらを合成する方法を探ってきたよ。
天然分子を人工的に合成できない課題は様々な理由があるけど、その中の1つは、複数の分子を組み合わせて目的の分子を作る時の化学反応制御の難しさだよ。
複雑な天然分子も、一部分だけを切り分けるとよく見かける分子だったりすることはしばしばあるので、それらをブロックのように組み合わせれば、目的の天然分子ができるはずだよ。
ただ、これがとても難しいよ。単に部品となる分子を混ぜたところで、目的の分子の形になってくれることはまずなくて、大量の無関係な分子ができてしまうよ。
無関係な分子は役に立たないどころか、場合によっては毒になってしまうし、分解もできないから、ゴミとして捨ててしまうよ。場合によっては、ほとんどがゴミになってしまう反応もあるよ。
この非効率な化学反応を抑制し、特定の反応のみを狙うことを世界中の化学者が研究していて、反応制御に関するノーベル化学賞は歴史上何度も存在するよ![注1]
カール・バリー・シャープレスは、不斉触媒でノーベル化学賞を受賞する[注2]まさにその年の2001年5月に、化学分野の著名な科学誌『アンゲバンテ・へミー』に重要な総説を投稿したよ。
シャープレスが「クリックケミストリー」と名付けたその分野は、化学分野に対する非常に重要なことを指摘していたよ。
まず、天然に存在する生体分子はいずれも、部品に相当する分子である「単量体」同士が結合することによって成り立っているよ。
そして、これら35種類ほどの単量体は、炭素原子が6個以内の数で結合したものでできていて、この部分の化学結合は非常に強力で簡単には壊れないよ。
対して、単量体同士、つまり各部品分子を結び付けている部分は炭素以外の原子[注3]であり、炭素原子と比べれば化学結合が容易に制御しやすいよ。
シャープレスは、生命がなぜ生体分子を扱えるのかと言えば、炭素とそれ以外の原子の化学結合の強さの違いを合理的に利用したからで、自然に選択されたものだと指摘しているよ。
そして、この法則を利用すれば、我々でも化学反応を制御し、単純な分子から複雑な生体分子を人工的に生み出し、不純物や効率の問題も大きく改善されるはずだと指摘しているんだよ!
シャープレスは、ベルトがバックルでカチッと音を立てて速やかに噛み合う様子に例え、単純な分子から目標とする分子のみを高速で合成することをクリックケミストリーと名付けたよ!
シャープレスがクリックケミストリーを提唱した背景には、これまでの生体分子の合成に関わる業界、特に製薬業界に関するある種の "どん詰まり" を解消するため、というのがあるよ。
製薬会社は生体分子の化学合成を行う最も下流の業界だけど、そこでは目標とする分子を合成するとき、それとそっくりだけど異なる分子を見つけ出し、合成を試みる、という傾向があったよ。
これは、元々目標とする分子が合成困難な中で、多少難易度が下がろうともどっちにしても困難な化学反応を目標としており、他の分子合成に応用できない限定的な手法を使う傾向があるよ。
シャープレスは、抗生物質として極めて重要な医薬品であるメロペネム[注4]は、工業的な生産ができる反応を見つけるまで6年かかったことを引き合いに出しているよ。
ヒュスゲン双極子環化付加反応の具体的な反応。アルキン (オレンジ色) とアジド (青色) は、互いに直線状の分子だけど、2つが出会うと炭素原子2個+窒素原子3個が繋がった五角形の環であるトリアゾールが生成されるよ。これは他の余計な反応が起こらないという点で優れているよ。 (画像引用元)
これはとても大きな指摘だったものの、では具体的な化学反応の制御法についてはまだまだ始まったばかりであり、これから研究をしなければならないものが多かったよ。
シャープレスは総説の中でいくつかの化学反応の例を挙げているけど、中でも特に注目されたのは、1961年にロルフ・ヒュスゲン(ロルフ・フーズゲン)が発見した化学反応だよ。
これは、分子中にそれぞれアジド[注5]とアルキン[注6]と呼ばれる部分を持つ分子が、その部分で化学結合して、炭素原子2個と窒素原子3個でできた「トリアゾール」という五角形の環を作る反応だよ。
トリアゾールは医薬品、農薬、染料など、極めて多種多様な有機分子に含まれている構造だから、トリアゾールを安定して合成できる化学反応の発見はとても重要だよ!
彼の業績を称え「ヒュスゲン双極子環化付加反応」と名付けられたこの反応は、多くの生体分子に導入可能な単量体から始まり、非常に反応効率が良く、廃棄物はほとんど発生しないよ。
また、試薬を溶かすための液体である溶媒は水でも良いというのも理想的だよ。水は安価で環境にやさしく、反応熱の吸収に優れている点で、工業生産でも障害になりにくいよ。
更に、化学反応が空気中、正確には酸素が存在する場合でも進むことも優れているよ。酸素という反応しやすい分子がある中でも化学反応が進むのはとても重要だよ。
シャープレスは、ヒュスゲン双極子環化付加反応はクリックケミストリーの最高傑作だと褒めていたけど、それでも弱点があったよ。それは反応速度と位置選択制だよ。
ヒュスゲン双極子環化付加反応は極めて遅い化学反応で、例えば98℃のお湯を18時間維持してようやく満足に反応するような、大変遅い反応だったんだよ。
また、単にトリアゾールを作るだけならともかく、五角形の狙った位置に元の分子がくっついている、という点では、あまり狙ったような反応ができていなかったよ。
モーテン・メルダルとカール・バリー・シャープレスが独立して発見した、銅イオン触媒の存在でヒュスゲン双極子環化付加反応を効率的に行う方法は、ベルトがバックルでカチっと噛み合うようなものであると例え、クリックケミストリーの具体例としたよ。これは後にクリック反応と呼ばれるようになったよ。 (画像引用元)
シャープレスはこの問題点に対して、銅イオンを含ませるだけでそれが触媒となるという、極めて単純だけど非常に重大なブレイクスルーを2002年に発見したんだよ!
論文中で「水に混ぜるだけで (By simply stirring in water)」と太字で書かれるくらいシンプルな解決策により、ヒュスゲン双極子環化付加反応は室温の水でも反応が進むようになったよ。
それだけでなく、銅イオンの存在で反応速度はなんと100万倍にもなったよ!反応は不可逆的であり、95%以上が狙った位置で反応するという効率の良さはとても重要だよ!
ところが、このような重大な発見と言うのは、面白いことに他の研究者も全く独立に、同時期に発見することがあるんだよ。2人目の受賞者のモーテン・P・メルダルはまさにその例だよ!
メルダルは、数十万と言う膨大な分子の候補から、医薬品となり得るような潜在的な候補分子を探索する研究を行っていて、それを合成するための化学合成を日常的に行っていたよ。
ある日、メルダルと彼の同僚は、アルキンにカルボン酸ハロゲン化物を結合させる反応を行うため、銅とパラジウムを触媒として含ませ、反応を行ったんだよ。
ところが、反応物を分析をしたところ、アルキンは狙ったカルボン酸ハロゲン化物とではなく、アジドと結合しており、トリアゾールを形成していたことを発見したよ!
後にメルダルは、銅イオンが触媒となり、例えカルボン酸ハロゲン化物という邪魔者が存在しようとも、アルキンはアジドと反応してトリアゾールを形成することを発見したよ!
これは、合成が難しいトリアゾールを選択的に合成できるという点で非常に重大な発見だったよ!メルダルはシャープレスより数ヶ月前にこの成果を公表したよ。
メルダルとシャープレスが独立して発見したこの反応は、クリックケミストリーの単純かつ重大な反応の例として、単に「クリック反応」と呼ばれるまでの代名詞になったよ!
クリック反応が重要なのは、アジドとアルキンという、どちらも多くの分子に存在する構造を手掛かりに、2つの分子を結合させてくれる、という点だよ。
アジドやアルキンを予め分子の中に用意しておく、と言うのはそこまで難しくはないので、後はこの2つがうまく噛み合ってくれれば、望みの分子をいくらでも作ることができるよ。
また、クリック反応はアジトとアルキンが無関係の変な所にくっ付くという、望ましくない反応をほとんど起こさない、という点がとても重要だよ!
クリック反応を使えば、これほど複雑で巨大な構造の分子を合成することもできるよ! (画像引用元)
クリック反応を使って、例えば従来よりずっと強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤[注7]を合成したり、非常に複雑に枝分かれした分子を合成するなどの成果があるよ!
ところがこのクリック反応、化学合成を進化させたスゴい発見だけど、とても致命的な問題を抱えていたよ。それは、この反応を進めるために使った銅イオン触媒の存在だよ。
銅イオンは生体にとって猛毒[注8]なので、細胞などの生きているものが存在する状況下ではクリック反応が使えないよ。これは、クリック反応が生化学分野に応用できないことを意味しているよ。
この重大な問題を解決したのが、3人目の受賞者のキャロライン・ルース・ベルトッツィだよ。と言っても、その発見は全く別のアプローチから見つけたものだよ。
ベルトッツィが主に研究していたのは、免疫細胞をリンパ節に誘導する生体分子に関する研究だよ。この研究は1990年代から盛り上がっていた分野の1つだけど、重大な問題を抱えていたよ。
ウイルスなどが細胞に感染する際、活性化することが分かっていた生体分子の1つに、「糖鎖」と呼ばれる、タンパク質や細胞の表面にある複雑な高分子化合物があったよ。
糖鎖は興味深い研究対象ではあったけど、従来の方法では実験的に観察ができないという問題があり、ほとんど研究が進んでいなかった分野でもあったよ。
細胞表面に存在する糖鎖に含まれてるシアル酸の構造。生体には存在しないシアル酸を生体内で合成することに成功した研究が、キャロライン・ルース・ベルトッツィに生体直交化学という新しい分野を開拓するきっかけを与えたよ! (画像引用元)
ベルトッツィは、1990年代初頭から糖鎖に関する研究を行っていて、その時興味深い話を聞いたよ。それは「シアル酸」と呼ばれる物質の合成に関する研究だよ。
シアル酸は糖鎖の中に存在する部品の1つではあるけど、その研究では生体には存在しないタイプのシアル酸を合成し、糖鎖の中に組み込んだ、というものだったよ。
ベルトッツィはこの研究を応用し、別の分子を自由にくっつけることが可能なシアル酸を持つ糖鎖を合成し、細胞の表面をこれでコーティングできないかと考えたよ。
もしもそれが可能ならば、例えばシアル酸に蛍光物質をくっつけ、糖鎖がどのように細胞の表面や内外を移動するのかを追跡できるから、糖鎖の役割について多くのことが分かるはずだよ!
ただしこれはとても難しいよ。何か他の分子をくっつけることが可能な箇所というのは、普通はどんな物質とも化学反応を起こしやすい不安定な部位であることを意味するからだよ。
つまり、ベルトッツィのアイデアを実現するには、狙った分子とは良く反応しつつも、それ以外の物質とはほとんど化学反応をしないという、非常に都合のいい性質を持つ物質が必要だよ。
ベルトッツィは、このような性質を持つ物質を「生体直交化学」と名付け、実際の候補を探索するという極めて難しい作業に挑戦したんだよ!
この考えがついに実現したのは1997年で、次いで2000年には最適な候補はアジドであることを発見したよ。これにはシュタウディンガー反応という反応の変形バージョンが使われたよ。
キャロライン・ルース・ベルトッツィが確立した歪み促進型アジド-アルキン環化付加反応の具体的な反応例。アジド (N3) がくっつく相手方は、環の構造を持った分子の一部にあるアルキン (八角形の中の三重線) の部分。環の分子を使うと、クリック反応は銅イオンの触媒なしでも進むことを発見したよ! (画像引用元)
歪み促進型アジド-アルキン環化付加反応を応用した具体的な研究例。蛍光物質を持つ分子を細胞表面の糖鎖にくっつけることで、細胞表面にある糖鎖を光らせ、顕微鏡で追跡できるよ。 (画像引用元)
この発見は重大だったものの、ベルトッツィは更にこれが発展できることを知ったよ。この頃、メルダルとシャープレスが実現したクリック反応の噂が耳に入っていたからだよ。
ベルトッツィはクリック反応に重要なアジドを使っていたために、クリック反応自体は自分の手法に応用できるだろうことに気づいたけど、同時に銅イオンの毒性の問題に直面したよ。
そこでベルトッツィは文献を掘り返して調べ、ついに1961年にドイツ語で書かれたある論文に、銅イオンの助けなしにクリック反応に似た反応が起こることを発見したんだよ!
それは、アジドとくっつくアルキンを含む分子を環にすることで、ほとんど何の助けもなしに速やかに反応することを述べていたんだよ。
ベルトッツィはこのアイデアを使い、アルキンを含む環の分子に蛍光物質を付けた物質を、細胞表面に存在するアジドを含んだ糖鎖とくっつける反応を2004年に成功させたんだよ!
この反応が優れているのは、銅イオンなしでクリック反応を起こせることにあり、生きた細胞がある中で、余計な副産物を生み出さずに効率的な反応を行える点だよ。
これにより、狙い通り細胞表面に存在する糖鎖に蛍光物質を付着させ、その移動を顕微鏡観察で追える状態にすることに成功したんだよ!
「歪み促進型アジド-アルキン環化付加反応」と名付けられたこの反応は、クリック反応の生体に利用できないという弱点を克服し、応用範囲を広げた点がとてもすごいんだよ!
どの程度安全かと言うと、2010年には生きたマウスの体内でクリック反応を実行できるという成功例まであるんだよ!
キャロライン・R・ベルトッツィ、モーテン・メルダル、K・バリー・シャープレスの3人が開拓したクリックケミストリーや生体直交化学は、まだまだ応用が期待される重要な化学的手法だよ! (画像引用元)
シャープレスとメルダルが確立し、そしてベルトッツィが生体でも使えるようにしたクリック反応は、現在でも様々な応用例があるものの、これが終わりかと言えば全くそうではないよ。
例えば、ベルトッツィが現在取り組んでいるものとして、がん細胞の表面に存在する糖鎖の研究が挙げられるよ。これは正常な細胞とは異なる振る舞いをしているよ。
がん細胞は常に発生する可能性があるけど、大半は免疫ががん細胞を退治するよ。しかし、一部のがん細胞が残り成長を続けるのは、何らかの理由で免役を回避していることを意味するよ。
ベルトッツィの研究から、がん細胞の表面に存在する糖鎖が、免疫細胞からがん細胞を保護する何らかの役割を果たしているらしい、という洞察が生まれているよ。
ベルトッツィと彼女の同僚は、がん細胞の糖鎖を分解する酵素と、糖鎖の種類を選んでそこにくっ付きやすい抗体をまとめ上げるためにクリック反応を使ったよ。
こうすれば、がん細胞の糖鎖を選択して抗体が付着し、それと共に繋がった酵素が糖鎖を分解、がん細胞のバリアを失わせ、免疫細胞に攻撃させることができるよ!
この新しいタイプの抗がん剤は、現在進行性のがん患者を対象とした臨床試験の段階にあり、もしかすると実用化するかもしれないものだよ!
また、これとは別の物として、多くの研究者が、がん細胞に付着する抗体に別の分子をくっつけた、新たながんの診断薬や抗がん剤をクリック反応で開発しているよ。
例えば、抗体に放射性同位体をくっつけ、PETスキャンでがん細胞の位置を特定したり、放射線で退治するなどが、これまでよりも少ない副作用でできるようになる可能性があるよ!
これらの応用が実際に実用化されるのかは、これからの研究次第なところはあるけれど、1つ確かなのは、クリックケミストリーや生体直交化学はまだまだ始まったばかりという点だよ。
様々な分子を選択的に結合させることができる手法は、これまで実現ができなかった新しいハイブリッドを無限に作れると言うことで、応用幅は無限大だよ!
キャロライン・R・ベルトッツィ、モーテン・メルダル、K・バリー・シャープレスが開拓したクリックケミストリーや生体直交化学は、これからが花開く時代だよ!
[注1] 反応制御に関するノーベル化学賞は歴史上何度も存在する ↩︎
例えばフィッシャーエステル合成反応 (1902年) 、グリニャール試薬 (1912年) 、ディールス・アルダー反応 (1950年) 、チーグラー・ナッタ触媒 (1963年) 、ヘック反応 (2010年) 、根岸カップリング (2010年) 、鈴木・宮浦カップリング (2010年) 、不斉有機触媒 (2021年) など、多数。
[注2] 不斉触媒でノーベル化学賞を受賞 ↩︎
カール・バリー・シャープレスは不斉分子 (鏡写しで異なる構造を持つ分子) に関する研究で、シャープレス酸化やシャープレス不斉ジヒドロキシ化などを発見し、2001年にノーベル化学賞を受賞した。ノーベル化学賞を2度受賞したのは1958年と1981年に受賞したフレデリック・サンガーのみであり、1人の人物が2度受賞するのはマリア・サロメア・スクウォドフスカ=キュリー、ライナス・カール・ポーリング、ジョン・バーディーンとサンガーに次いで5人目である。
[注3] 炭素以外の原子 ↩︎
より正確には、炭素と水素以外の原子を指す。これをヘテロ原子と呼ぶ。
[注] メロペネム ↩︎
髄膜炎、肺炎、敗血症、腹腔内感染、尿路感染症、カンピロバクター、アシネトバクター、炭疽菌など、極めて幅広い細菌感染症に対応できる抗生物質。効果の広さと安全性から、現代医療を提供する上で欠かせない存在であり、かつ医薬品の入手が困難な国や地域でも比較的入手しやすい医薬品をまとめた「WHO必須医薬品モデルリスト」に掲載されるほど重要な医薬品。
[注5] アジド ↩︎
窒素原子が3個直線状に並んだ構造を持つ分子の総称。金属化合物の場合は爆発性や強い毒性を持つが、有機分子についたアジドはほとんどが爆発性も毒性もなく無害であり、多くの有機分子に付加して安全に取り扱える。
[注] アルキン ↩︎
炭素原子の間に三重結合を持つ分子の総称。最も単純なのはアセチレンだが、普通はその片方ないし両方が別の分子とくっついており、より広い名称としては炭素の三重結合を持つ分子と言う意味でも使われる。
[注7] アセチルコリンエステラーゼ阻害剤 ↩︎
副交感神経を興奮させる薬剤。緑内障、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、統合失調症などの治療に使われる。
[注8] 銅イオンは生体にとって猛毒 ↩︎
銅は少量であれば生きるのに欠かせない必須元素である一方、高濃度では毒性を持つ。例えば、台所のぬめり防止に銅製品が使われるのは、銅イオンがぬめりの素である細菌の増殖を阻害するため。十円玉の緑色の錆 (緑青) は猛毒と言う噂もこれに端を発するが、実際にはこれ自体は水に溶けにくく銅イオンを放出しないため、毒性はほとんどない。
[ノーベル財団の公式資料]
[受賞理由に関わる主要な論文]
[授賞理由と関わりの深い研究論文]