ダイエット効果を検証する難しさ(9月9日 Cell Metabolism オンライン掲載論文)

2022.09.25

機能性食品や特保の冠をつけた様々な食品やサプリが巷にあふれており、テレビの宣伝もおそらく1割以上はこのような製品に費やされているように思える。


毎日この HP で科学を紹介していると、一般の方がどのような根拠でそれぞれの製品を選んでおられるのか、是非知りたいところだ。


特に宣伝に使っていい効果について、どこまで真剣な審査で評価が行われているのか、一度専門家に聞いてみたいと思っている。


例えば最近話題になった塩野義の抗コロナ薬の緊急承認を認めなかったことからわかるように、薬事については評価のポイントもはっきりしており、緊急承認であっても有効という判定のハードルは高い。


しかし、例えばダイエット効果があるお茶と言った製品の承認基準ははっきりしているのだろうか。


今日紹介する英国アバディーン大学からの論文は、肥満に対するカロリー制限治療時に、カロリーを朝昼晩、どのように振り分ければ効果が高いか調べた研究で、ダイエット効果を調べるためにはせめてこの程度の治験は要求すべきではないかと思った研究で、9月9日 Cell Metabolism に発表された。


タイトルは「Timing of daily calorie loading affects appetite and hunger responses without changes in energy metabolism in healthy subjects with obesity(毎日のカロリー摂取のタイミングは食欲と空腹に影響するが、エネルギー代謝には影響がない)」だ。


この研究では BMI 30 以上の健康なボランティアを最終的には30人集め、全員約1700kCal という厳しいカロリー制限を行い、その間の体重変化や様々なエネルギー代謝指標、そして主観的な身体状況の報告などを克明に行っている。


研究の目的だが、カロリー制限するとき、朝多く食べた方がいいのか、夜多く食べた方がいいのかを調べることで、朝グループはカロリーを45、25、20の割で朝昼晩に分けている。


一方夜グループは全く逆の20、35、45と言う振り分けを行っている。


また、最初の4週は朝グループ、あるいは夜グループで始めた場合、1週間お休み期間をおき、今度はグループをスイッチするクロスオーバー研究になっている。


まず、1700Kcal と言う制限を続けると、全員平均で4kgぐらい低下している。しかし、研究の目的であった朝昼晩へのカロリー配分の違いは、結果に全く影響ないという結論になっている。


基礎代謝、エネルギー消費、持続血糖モニタリング、胃内要物の通過時間など、かなり詳しい指標が調べられているが、全く変化がない。


唯一変化があったのは、朝グループでは空腹を覚える時間が減っており、満足感が持続する点で、これと呼応してグレリンなどの食欲ホルモンの分泌に明確な差を認めることが出来る。


以上から、カロリー制限は、制限さえ守られればどのよな食事の分配でやっても効果は同じだが、朝多く食べる方が、空腹感に悩ませられることはない、と結論できる。


さて、ここまでネガティブな結果であるにもかかわらず、この論文が Cell Metabolismに 掲載された一つの理由は、介入期間がそれぞれ1ヶ月と短いものの、しっかりとしたプランで治験が行われている点にあると思う。


たしかに週のうち何日か、様々な検査を受けるため通院するというのは大変だとは思うが、簡単な介入でも、最低ここまではやってほしいという条件が明確な点だ。


もちろん、私は機能性食品や特保と呼ばれる製品の認可条件についてはほとんど知らない。


ただ、科学をとおして消費者を守ることも役所の重要な役目で、このような論文を読みながら、基準を常にアップデートしてほしいと思い、論文を紹介した。

By西川伸一

オールアバウトサイエンスジャパンは医学・医療を中心に科学を考えるNPO法人です。医師であり再生科学総合研究センター副センター長などを歴任された幹細胞や再生医療に関する教育研究の第一人者である西川伸一先生が代表理事を務められております。日々最新の論文を独自の視点でレビュー、発信されておりますのでご興味のある方はぜひお問い合わせください。