初期大陸の根っこ?海洋地殻から28億年前の岩石を発見

2022.06.15

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

 

今回のお話は、28億年前の岩石が海洋地殻から見つかったニュースだよ。海洋地殻の大半は1億年未満でマントルへと沈み込んでしまうことを考えると、これは非常に古い年代だよ!

 

これは地球最初の大陸の名残である可能性があり、非常に貴重なサンプルであると同時に、初期地球の物質循環を探る大きな手掛かりになるよ!

カープバールクラトンの破片?

 

海洋地殻は入れ替わりが激しいよ

地球は46億年前に作られ、地球で見つかる最も古い鉱物粒子は44億年前のものだから、遅くともこの時代までには地球は硬い表面を持っていたことが分かるよ。

 

それでも大陸の形成は遅かったらしく、最古の大陸は恐らく36億年前か31億年前に形成されたと言われているよ。

 

大陸形成の証拠は、その時代に形成された岩石を調べることで推測することができるけど、それはとてもレアなケースだよ。

 

遅くとも25億年前までに、地球は現在と同じようなプレートテクトニクスを始めていると言われているから、このころには地球表面と内部の物質循環が起きていたことが推測できるよ。

 

すると、プレート運動により大陸地殻は沈み込み、マントルに落ち込んで溶かされるから、その時点で以前の情報は消えてしまうよ。

 

数十億年も昔のことを知ることができる岩石は、それだけ長い間マントルに沈み込まなかったということになるから、世界でも数か所しかない珍しい事例となるよ。

 

そう考えると、逆に更新が激しい海洋地殻では、そのような古い岩石は存在しないとも考えることができるよ。

 

海洋地殻は、マントルから高温の物質が上昇する海嶺で生成された後、プレートテクトニクスで移動し、沈み込み帯で沈んで再びマントルへと戻る循環の中にいるから、ある意味では当然だよね。

 

実際、多くの海洋地殻は、海嶺から遠ざかれば遠ざかるほど古い時代になっていくけど、多くは1億年未満の年齢しか持たない、非常に若い岩石で構成されているんだよ。

 

大陸の破片がマントルを漂っている?

しかしながら、近年の研究ではそうでもない可能性が出てきたんだよ。この考えのきっかけは、マントルの研究からだよ。

 

マントルでは物質が循環していることから、物質の組成はとても均一であるという予測が長年定説となっていたよ。

 

ところが近年の研究では、マントルの組成は場所場所によってかなり不均一であるということが分かってきて、その理由が新たに謎となってきたんだよ。

 

その中の仮説の1つとして、マントルの高温高圧下でも溶けない物質の塊があり、これが組成の不均一に表れているというものがあるよ。

 

そうなると、この溶けない塊とは何かなってことになるわけだけど、その由来は大陸地殻ではないか、という考えが出てきたわけだよ。

 

と言ってもこれは地球表面から沈み込んできたものではなく、むしろ初めから地中にあったものではないか、というのがこの考えのキモだよ。

 

この考えではまず、地球で最初に形成された大陸の下側、いわば根っこと言える部分が、マントルの深部から上昇するマントルプルームにより剥がれて分離し、マントル循環の中に取り込まれるよ。

 

この大陸の破片は、マントル中の高温高圧下でも溶けることのない物質でできていて、何十億年でもマントルの中を漂えるよ。

 

そうなると、その中の一部が地表への噴出に巻き込まれ、海洋地殻の一部として地表に存在してもおかしくない、となるわけだよ。

 

これは初期の地球の大陸、しかもマントルと接するような深部の部分の情報を保存している可能性があるわけだから、非常に希少なサンプルとなるよ。

 

また、地球内部の物質循環を間接的に知ることのできる手掛かりともなるわけだから、海洋地殻中の古い岩石の発見は非常に興味深いんだよ!

 

太古代の大陸の根っこを発見!?

海洋地殻のクラトン採集地点

今回サンプルが採集されたのは、インド洋南部にある南西インド洋海嶺付近だよ。地殻にはアフリカ大陸があり、そこには太古代の大陸の残りと考えられるカープバールクラトンがあるよ。
(画像引用元: 原著論文Fig1)

 

さて、今回のウッズホール海洋研究所、マックスプランク化学研究所、中国科学院の研究チームは、非常に興味深いサンプルをインド洋海底で発見したよ。

 

正確な場所は、アフリカ大陸の南側、インド洋南部にある南西インド洋海嶺付近だよ。この海嶺は、だいたいどこでも1年で14mmの拡大率と安定していることで知られているよ。

 

また、この海嶺の地殻にはアフリカ大陸があるけど、アフリカ大陸南部にはカープバールクラトンという、37億年前から26億年前に形成されたかつての大陸の名残が存在しているよ。

 

つまり南西インド洋海嶺では、カープバールクラトンから分離した古い岩石が上昇し、現在ある海洋地殻の中に取り込まれている可能性があるわけだよ。

 

そこで、この海嶺付近の海底の数ヶ所からサンプルを取り、鉱物の組成や微量元素の同位体比を調べることで、どのような素性を持つのかを調べたよ。

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今回採集されたサンプルの1つだよ。マントルの高温高圧にも耐える橄欖岩で構成されているよ。
(画像引用元: 中国科学院)

 

採集したサンプルは、主に橄欖岩で構成されているよ。橄欖岩は宝石ではペリドットとも呼ばれる橄欖石をメインに含む岩石で、マントル由来の岩石としては典型的だよ。

 

ただ、岩石の溶ける温度を下げる物質である酸化アルミニウムの含有率は低く、逆に高温に耐えられるクロム含有率の高いスピネルの存在など、高温に耐える物質の存在がとても興味深かったよ。

 

これらの物質の割合は、これまでに調べられてきた海底由来の橄欖岩の中でも非常にまれな組成で、極めて高温に強い岩石のサンプルであることが判明したよ!

 

微量元素から素性が判明!

更に微量元素の同位体比率を調べてみると、この岩石の由来が見えてきたんだよ。

 

ルテニウム・パラジウム・レニウム・オスミウム・イリジウム・白金の6元素は強親鉄性元素と呼ばれていて、その名の通り鉄に類似した性質を持っているよ。

 

強親鉄性元素はそれだけでなく、比重が重く、ケイ酸塩鉱物に取り込まれにくいという性質も併せ持っていることから、マントルでの物質の移動を追うのに適しているよ。

 

そして今回の研究のように、同位体比率から岩石の年代をある程度推定することもできるんだよ。

 

今回採集されたサンプルは、いくつか考えられる年代測定法の一部が適用できない問題があり、測れたもののいくつかは10億年未満と非常に若いものもあったよ。

 

それでもいくつかのサンプルからは、この岩石の由来を示す強力な証拠を示してくれていたよ。

 

まずパラジウムとイリジウムの組成比は、典型的な海底にある橄欖岩と比べて非常に低く、他の融解した岩石に取り込まれた古い大陸地殻のサンプルと似ていたよ。

 

また、天然にある非常に寿命の長い放射性同位体である187Reによる放射年代測定で、いくつかのサンプルは22億8000万年前から27億8000万年前に固化したことを示していたよ!

 

これらのことから、今回採集された橄欖岩は、最大で約28億年前の太古代に存在した大陸地殻であり、恐らくその由来はカープバールクラトンだと思われるよ。

 

そしてこのサンプルから、非常に古い年代の大陸地殻がマントルの滞留によって分離し、その破片が海嶺から表面に湧き出してきた、という物質循環が見て取れるんだよ!

 

大陸の根っこはとてもレア!

マントル内で起こるクラトンの循環

今回の発見を元に推測される、大陸の破片の循環だよ。
(画像引用元: 原著論文Fig5)

 

本当にそんなことが起こるのか、研究チームはコンピューターシミュレーションを実施し、実際に1500km離れた場所の大陸の破片が海嶺に届く事を確認したよ!

 

ただし、分離した大陸の破片の量から考えると、海底サンプルに見られる古代の大陸の断片は、その総量から考えるとかなり少ないよ。

 

これについて研究チームは、大部分は海嶺に到達するまでの時間がとても速い事に由来すると推定しているよ。

 

最初の分離から1億年経過すると、分離した破片の約20%が海嶺に到達して海洋地殻となり、その後沈み込み帯に沈んでしまうと考えているよ。

 

沈み込み帯はマントル深部に達するので、溶けにくい大陸の破片でもさすがに耐えきれないと予測されるから、結果的に消滅してしまうよ。

 

この事から、極めて古い時代の大陸地殻の一部が海洋地殻に存在するのは、とても珍しいケースであると考えられるよ!

 

大陸の破片がもっとたくさん海底にあるかも?

この研究結果を確かめるには、更にいくつかの研究が必要となってくるよ。と言っても、その一部はマントル物質の直接採集が必要で、それは当面は実現できないよ。

 

すぐ着手可能なものとしては、コマチアイトと呼ばれる岩石の生成量から、今回のような太古代に起きたマントルプルームの量を推定する必要があるよ。

 

コマチアイトは、現在のどの火山でも到達しえない1600℃もの超高温のマグマが固まって生成されると推定される火成岩で、その熱源はマントルプルームにあると考えられているよ。

 

太古代の岩石にはコマチアイトを含むものがあるから、コマチアイトの分布や量から、太古代のマントルプルームの量を推定する事ができるよ。

 

すると、大陸地殻の下側を破壊するプロセスがどの程度起きたかを推定できるから、これにより現在見られる海洋地殻の大陸の破片の量も推定できるよ。

 

今回の研究結果は、掘って採集する事が困難な、大陸地殻の深い部分、しかも極めて古い時代の物を採集できたという点で、非常に大きな発見だよ。

 

太古代の大陸について多くの情報が得られるだけでなく、初期の地球がどの程度活発だったかを推定する事ができるようになるよ!

 

文献情報

[原著論文]

  • Chuan-Zhou Liu, Henry J.B. Dick, Ross N. Mitchell, Wu Wei, Zhen-Yu Zhang, Albrecht W. Hofmann, Jian-Feng Yang & Yang Li. "Archean cratonic mantle recycled at a mid-ocean ridge". Science Advances, 2022; 8, 22. DOI: 10.1126/sciadv.abn6749

[参考文献]

彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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