衝突2時間前!小惑星「2022 EB5」を衝突前に観測

2022.04.12

みなさんこんにちは!サイエンス妖精の彩恵りりだよ!

今回のお話は、地球衝突前に観測された5例目の小惑星となった2022 EB5のお話だよ。

地球に小惑星は毎日何個も落ちてきているけど、これを事前に観測するのはとても珍しいよ。この観測事例は、将来の隕石災害を防ぐのにも役立つはずだよ。

2022 EB5の概要

隕石と小惑星はビミョ~に違うよ

宇宙には大小さまざまな天体があるけど、大半は非常に小さなものだよ。この中で、彗星のように表面活動のない天体を小惑星と呼んでいるよ。現在100万個以上が見つかっているよ。

一方で、地上で見つかる、宇宙からやってきた天体の破片を隕石と呼んでいるよ。現在見つかっている約7万種類の大半は、かなり古い時代に落ちてきたものだよ。

小惑星と隕石は、宇宙にあるか地表にあるかの違いで、2つは同じものだとみなせる…というのが普通の考えだよね。

ただもちろん、実際に宇宙にあったものが地上に落下し、それを拾って初めて結びつくのだ!といじわるな反論は可能だよ。

そして、この反論を覆す証拠は、実はつい最近、2008年に最初の例が見つかるまでなかったんだよ!

過去に5例しかない落下前の観測!

2008年10月6日、宇宙で見つかった小惑星が、約20時間後に地球へ落下すると分かり、世界中の天文台がこの小惑星を観測したよ。

地球大気圏へと落下した小惑星は空中分解し、スーダンのヌビア砂漠へと落下、後の現地調査で実際に隕石を発見する事ができたよ!

この小惑星は2008 TC3という仮符号が付けられ、隕石は落下地点近くの、砂漠を横断する鉄道の駅からアルマハータ・シッタ隕石と名付けられたよ。

このようにして、小惑星2008 TC3は、大気圏に突入する前に宇宙空間で発見された史上初の小惑星として天文史に記載されたんだよ。

衝突前の小惑星の観測例

地球へ衝突する前に発見された小惑星は、今回の2022 EB5を含めたった5例しかないよ。

このような、大気圏突入前に宇宙空間で発見される小惑星の例は、その後は2014 AA2018 LA2019 MOで過去に4例、そして今回のお話の主役である2022 EB5でようやく5例目なんだよ。

こんな状態だと、SF映画に出てくるような隕石災害による人類の危機はどうなるの!?って心配する人もいるかもしれないけど、それとはちょっと話が違うよ。

人類の文明や地球環境そのものを激変させるようなサイズの小惑星の場合、地球よりずっと遠くの場所にあっても明るく輝いているから、そのほぼ全てが発見済みと考えられているよ。

また、軌道も正確に予測が可能で、今後100年とか1000年とかの時間スケールで地球との接近距離が予測されているから、当分の間は落下する心配はないよ。

これほど正確に見つかっているのは、1994年7月にシューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に落下した事例から、地球へ巨大な小惑星が衝突するリスクが現実味を帯びて観測体制が強化された事が要因だよ。

一方で、事前に落下が予測された5例は、大きさはどれも数メートルくらいで、宇宙にある時の明るさは、地球に極めて近づいた時でさえ、大型望遠鏡でも観測限界ギリギリ。

直径数メートルの小惑星は太陽系に10億個以上あるとされ、同じくらいのサイズの小惑星は1日10個前後地球に落下しているけど、その大半は見つかってすらいないよ。

2022 EB5の発見から落下まで

さて、今回紹介する2022 EB5は、協定世界時2022年3月11日19時24分にハンガリーの首都ブダペストにあるピスケーシュタトゥ観測所で最初に観測されたよ。

この時、天体にはまだ正式な仮符号が付与されておらず、より暫定的な仮符号であるSar2593という名前が付けられていたよ。

その後の約1時間の観測で、Sar2593は地球に向かっており、あと1時間で地球に衝突すると分かったんだよ。

ヨーロッパの天文台が初めて観測した小惑星が、その後衝突するコースにあると判明したのはこれが初めての事例だよ。

21時22分、最初の発見からわずか1時間58分後、Sar2593は北大西洋に浮かぶノルウェー領ヤンマイエン島の南西側の海に落下したと推定されるよ。

Sar2593により正式な仮符号である2022 EB5が付与されたのは、衝突から更に約1時間後の22時23分の事だよ。

衝突時の観測データも豊富!

残念ながら、2022 EB5は極めて小さいために大気圏突入時にすべて燃え尽きた可能性が高く、仮に破片が残っていたとしても今頃は大西洋の海の底だよ。

それでも、宇宙にあるうちに小惑星を観測し、その後衝突する事を正確に予測できたことは、さっきも書いた通り5例目と非常に珍しい事だよ。

また、ヤンマイエン島と比べるとかなり離れた位置になるけど、アイスランド北部、アークレイリに近い複数の観測者は、2022 EB5の落下に関連していると推定される、水平線上の明るい閃光を目撃したよ。

更に、22時15分にグリーンランド、23時40分にノルウェーの超低周波音観測所が、やはり2022 EB5の落下に関連していると推定される超低周波音を観測したよ。

超低周波音とは、ヒトの耳に聞こえるよりも更に低い音で、これを捉える観測所が世界中に設置されているよ。

これらの観測所は、国際条約で禁止されている大気圏内での核実験を捉えるために設けられたものだけど、火山の噴火や隕石の空中分解のような核爆発に匹敵するエネルギー現象も捉える事があるよ。

今回観測された超低周波音の規模から、2022 EB5は大気圏を17.2km/sで進んでいて、空中分解した時には4kt (広島市に投下された原子爆弾の27%程) のエネルギーを放出したと推定されるよ。

更にここから、2022 EB5直径がわずか2m程度の小惑星であったと推定できるんだよ!

小さな出来事だけど観測の意義はあるよ!

さて、ここまで読んでみると、2022 EB5の発見はかなり幸運な割には、数値そのものはあまり大したことなくて、実際のところこれが何らかの被害をもたらすとは思えないものだよ。

でも、このようなごくごく小さな小惑星でも、観測する事は非常に重要な意味を込めているよ。

小惑星の事前観測の利点

2013年のロシアの隕石災害は、たった20mの小惑星が原因だよ!

例えば、2013年2月15日にロシアのチェリャビンスク州に落下したチェリャビンスク隕石は、1491人の怪我人と7200棟以上の建物に損害をもたらしたけど、元の小惑星の直径はわずか20mだったと言われているよ。

直径以外にも様々な悪条件が重なった事から、このような人口密集地に落下して発生する大規模な隕石災害は100年に1度とも言われているよ。

とはいえ、この確率は少ない観測証拠に基づくものだから、実は知られていないだけでもっと頻繁に起きる可能性もあるよ。

そして直径20m程度の小惑星は日常的に落ちてくるから、数万年に一度あるかないかの地球全体に危機を招く巨大な小惑星よりよほど懸念すべき災害と考える事もできるよ。

例えば紀元前1650年に死海の近くで起きた隕石の空中分解は、近くにあった都市トール・エル・ハマムを滅ぼした可能性があるよ。

1万2000年前には、当時は草原だったアタカマ砂漠で起きた隕石の空中分解により、周辺の大型哺乳類が一掃された可能性もあるんだよ。

地球全体と比べれば局所的とはいえ、それでも周辺地域に大打撃をもたらした隕石災害と思われる痕跡は、現在でも新しいのが見つかりつつあるよ。

そして、2008年に最初の観測例があった後、その後は2014年、2018年、2019年、2022年と、前例がなかった頃と比べると数年に1回の頻度で見つかっているよ。

また、2022 EB5の観測回数は、発見から衝突まで2時間足らずの間に合計144回で、7ヶ所の天文台が観測していたよ。

これは過去の例と比べると非常に多い回数で、例えば2例目となった2014 AAは、発見日時がちょうど年末年始であった事もあり、1ヶ所の天文台による8回の観測に留まった事と比べると違いは一目瞭然だよ。

2022 EB5の観測データは、いつ起こるか予測不能な天文現象に対して、世界中の天文台がリアルタイムで速やかな連携が取れる体制が構築されている事を示す好例だよ。

2022 EB5のような観測例はこれからも出てくると予想されるけど、今後はもっと高頻度になってくると予測されるよ。今回のようにわざわざ記事を書くほど珍しい話じゃなくなる日も遠くはないかもね。

そしてそうなれば、2013年のチェリャビンスク州の例のような災害を事前に予測できるような時代もそう遠くはないと言えるかもしれないね!

文献情報

[元データ]

[参考文献]

  • Karl Antier. (Mar 13, 2022) "2022 EB5 : 5th predicted Earth impact!". International Meteor Organization.
  • Naomi Hartono. (Mar 16, 2022) "NASA System Predicts Impact of Small Asteroid". National Aeronautics and Space Administration.
  • "Fireball and Bolide Data". Jet Propulsion Laboratory Center for Near-Earth Object Studies.
  • Don Yeomans & Paul Chodas. (Mar 1, 2013) "Additional Details on the Large Fireball Event over Russia on Feb. 15, 2013". National Aeronautics and Space Administration Near Earth Object Program. (Internet Arctive WayBack machine on 30 April 2013
  • Ted E. Bunch, Malcolm A. LeCompte, A. Victor Adedeji, James H. Wittke, T. David Burleigh, Robert E. Hermes, Charles Mooney, Dale Batchelor, Wendy S. Wolbach, Joel Kathan, Gunther Kletetschka, Mark C. L. Patterson, Edward C. Swindel, Timothy Witwer, George A. Howard, Siddhartha Mitra, Christopher R. Moore, Kurt Langworthy, James P. Kennett, Allen West & Phillip J. Silvia. "A Tunguska sized airburst destroyed Tall el-Hammam a Middle Bronze Age city in the Jordan Valley near the Dead Sea". Scientific Reports, 2021; 11, 18632. DOI: 10.1038/s41598-021-97778-3
  • Peter H. Schultz, R. Scott Harris, Sebastián Perroud, Nicolas Blanco & Andrew J. Tomlinson. "Widespread glasses generated by cometary fireballs during the late Pleistocene in the Atacama Desert, Chile". Geology, 2022; 50 (2) 205-209. DOI: 10.1130/G49426.1
彩恵 りり(さいえ りり)

「バーチャルサイエンスライター」として、世界中の科学系の最新研究成果やその他の話題をTwitterで解説したり、時々YouTubeで科学的なトピックスについての解説動画を作ったり、他の方のチャンネルにお邪魔して科学的な話題を語ったりしています。 得意なのは天文学。でも基本的にその他の分野も含め、なるべく幅広く解説しています。
本サイトにて、毎週金曜日に最新の科学研究や成果などを解説する「彩恵りりの科学ニュース解説!」連載中。

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